相場英雄の「楽園の瑕」を読む
2026.02.28
・この本は、「EXIT イグジット」(2021年刊)の続刊ととらえられる。主人公は前著と同じ、日本資本主義システムの掃除人古賀良樹だ。
・今回は彼が山梨県に引退し、そこで晴耕雨読の生活を始めるところから始まる。
・そこに兵頭孝吉というエコノミストが講演に来る。テーマは地方創生だ。兵頭は竹中平蔵氏をモデル化しているようだ。ちなみに竹中氏は安倍内閣のブレーンとして郵政民営化などに活躍したことで知られる。
・兵頭氏はリエゾンホールディングの役員として、地域おこしを商売ネタに利用しようとする。これに対し地域住民となった古賀良樹が最後の力を振り絞って立ち上がり、それを阻止するというのが今回のお話だ(詳しくは本書をお読みいただきたい)。
・相場英雄は「EXIT イグジット」では日銀の問題点を鋭くえぐった。今回は地方創生にかかわる問題点をわかりやすく浮き彫りにしている。これを読んで思い出したが、ある学会で地域大学に勤める先生が地方創生を肯定的にとらえていて、驚いた覚えがある。学会からも批判精神が消えつつあるのかもしれない。
・それにしても日本経済の停滞が叫ばれてからすでに30余年が経とうとしている。最近ではAI革命とトランプ旋風、近隣諸国との緊張関係の高まりなど、さらに問題は複雑化している。にも拘わらず指導者にあまり危機感はないようだ。むしろ小説家の方が時代の風を敏感に感じるのかもしれない。
・明治維新の時には、ペリー提督の来航によって、幕府の無能さが明らかになり、それに代わる勢力として薩摩や長州が立ち上がり明治維新につながった。さて今回の場合にはどこから”幕末の志士”が表れるだろうか。
(参考文献)
[1]相場英雄、「楽園の瑕」、小学館、2025
[2] 同、「EXIT イグジット」,小学館、2021
[3]島崎藤村、「夜明け前」、新潮文庫、平成26年
