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先の見えたAIブーム?

先の見えたAIブーム?

 2025.10.11

・最近AIブームの先行きに関する議論が盛んにおこなわれている。一方で、アルトマン等は必死で金集めをしており、AIをよくわかっていない日本の投資家たちが、将来不安にさいなまれて金を放り込んでいる。しかしアメリカではAIのあるべき姿に関して議論が始まっており、その先行きは不透明だ。

 

・問題はAGI(Artificial General Intelligence:人間が行うほぼすべての知的作業[学習、理解、問題解決、状況判断など]を、人間と同等かそれ以上に実行できる人工知能:wikipediaによる)が存在するのか、もしもそれが存在するとしたら、いつ実現するのかだ。

 

・AGIの実現のためには、AIが「世界モデル」を持つ必要がある。世界モデルとは、AIが複雑な事象(例:現代の政治経済体制)の分析に関して、論理の積み重ねでない洞察力を持つことだ。ウォールストリートジャーナルのコラムニストであるクリストファー・ミムズの表現を借りれば、AIが「人間や動物のように、周囲の環境から学習し、環境の抽象的なモデルを「頭」の中で忠実に表現できるようにすること」だ(参考文献[1])。AI開発者は、この世界モデルが次世代AIの開発に不可欠だとみている。

 

・しかしAIの専門家はこれが実現するかどうかに懐疑的だ。たとえば、ニューラルネットの解析に不可欠な「誤差逆伝播」を開発したヤン・ルカン(Yann Lecun)は、以下のように述べる。

 

 「人間が自動車の運転を学ぶには15時間の練習で十分だが、・・・自動運転車をトレーニングしたとすれば、マシンが崖から落ちずに運転することをまなぶまでに、1万回も崖から落っこちてしまう」(参考文献[3],p147-)。

 

・つまりAIの将来性をめぐって専門家の間でも議論が分かれているのが現実だ。この問題に関しては、まさに洞察力の出番ということになる。

 

・話は一転して当方が開発中のe予測に飛ぶ。筆者らは、「いくらAIが発達しても、将来のことは予測できない」という見込みのもとにモデルを開発中だ。それはe予測がまずシナリオによって、基本的な世界観を提示し、それに基づいて数値予測を行うからだ。つまりe予測はAIが持たない洞察力と計算の組み合わせで予測を行う試みだ。来年1月のエネ資(エネルギー資源学会)には、その一端を公表する。乞ご期待。

 

(参考)

[1]Christopher Mims,"What are 'World Models?'the key to the next big AI leap",WSJ,Oct.6,2025

[2]John Thornhill "The flawed Silicon Valley consensus on AI",FT,Oct.09,2025

[3]ヤン・ルカン、Martin Ford, in 「人工知能のアーキテクトたち」、松尾豊監訳、水原文訳、O7reilly,2020

[4]DefineCode,'The Future no one wants to admit:7 predictions about AI that will change everything',Medum,Oct.4,2025