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強気相場はいつまで続くか?

強気相場はいつまで続くか?

  2025.09.27

・このところ株式市場などで強気相場が続いている。これはアメリカでも同様だ。その理論的背景を探る面白い記事がフィナンシャル・タイムズに掲載された(参考文献[1])。

 

・そこでは、現在の強気相場の論理付けを「非弾性市場仮説」(Inelastic Markets Hypothesis)に求めている。これはブラック・ショールズによる効率的市場仮説へのアンチテーゼだ(参考文献[2])。

 

・効率的市場仮説(efficient market hypothesis)は、1970年代に提起されたもので、ブラック・ショールズ方程式(Black-Scholes equation)に集約される(例えば、参考文献[3],第13章)。これによってショールズは1997年ノーベル賞を受賞した(ブラックは1995年に死亡)。問題はこのモデルがブラウン運動による株式市場の変動という仮定に基づいているため、”ありえないような変動”の危険性を軽視していることだ。

 

・これに対し、非弾性市場仮説に従えば、「株式市場への1ドルの投資がその全体の価値を5ドル増加させ、しかもその効果は永続的であるという」。投資家のジャンーフィリップ・ブショー氏は、今の強気相場は、この理論で解釈するのがわかりやすいという。ただしこの話には続きがある。もしも資金流入が止まったら、この相場は一挙に崩れる可能性があるということだ。

 

・さて日本経済のみならず、世界経済も難しい局面に差し掛かりつつある。その時に(もしくは何らかの突発現象が生じたら:たとえば中東における核戦争の始まり)、株式相場が崩れる可能性がある。一挙に世界経済は、1929年の再来を迎えるかもしれない。ご用心。

 

(参考)

[1]Robin Wigglesworth,"Investor Jean-Philippe Bouchaud:'The whole bull run is because of an influx of money'",FT,Sept.25,22025

[2]Xavier Gabaix,Ralph S.J.Koijen,"In Search of the Origines of Financial Fluctuations:The Inelastic Markets Hypothesis",NBER,Working Paper,28967,2021

[3]Salih N. Neftci,An introduction to the Mathematics of Financial Derivatives,Academic Press,1996