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AI攻勢も一段落?

AI攻勢も一段落?

 2025.09.06

・このところ、新聞を読んでも、テレビを見ても、AIがらみのニュースが多い。しかしその多くはオープンAIなどが行う記者発表を翻訳しているだけで、AIの本質に迫るものはあまり見かけない。

 

・AIの意義に関して、最近若年雇用に対するAIインパクトの研究が発表された。これは、IT分析の権威であるブリンジョルフソン教授(スタンフォード大)らによるものだ(参考文献[2])。

 

・それを読むと、チャットGPTなどのAI生成ツールの登場によって、人間の作業がもっとも簡単に自動化できるソフト開発分野などで若年労働者が負のインパクトを受けているという。

 

・とくに影響を受ける分野は、ソフトウェア開発者、受付担当者、翻訳者、顧客サービス担当者などだ。とくに22-25歳のソフト開発分野の従業員数は2022年ピークから2割近く減っていたという。

 

・それ以外の年齢の労働者があまりAIの影響を受けなかったのは、彼らがキャリアを通じて自動化しにくいスキルを身に着けていたからかもしれない。

 

・AIの労働者に対するインパクトは、長期的にはさらに大きい可能性がある。ペンシルベニア大学のエラウンド等による研究によると(参考文献[3])、①GPTは社会構造を変えるような汎用技術(general-purpose technology)であり、②全雇用の8割の仕事が少なくとも10%は削減される可能性がある、としている。

 

・AIの労働力に対するインパクトは重要な検討課題だ。AIが汎用技術である以上、それは経済全体の生産性を向上させる(補完効果)とともに既存の労働力を代替する。アメリカのようなAI開発国では、補完効果の方が大きいだろうが、日本のようなAI輸入国では代替効果の方が大きく出るのではないだろうか。

 

・当事務所では、AIに関して、①まず基本文献の読み込み(AIの成り立ちを理解)、②次いでAPI経由でわれわれのプログラムとの連携可能性を探っている。いずれにせよ、AIの基本的メカニズムを理解することが先で、それが終わるまで本格的利用は控えるつもりだ。

 

(参考文献)

[1]Justin Lahart,'There is now clearer evidence AI is wrecking young American's job prospects',WSJ,Aug.27,2025

[2]Erik Brynjolfson etal.,'Canaries in the coal mine? Six facts about the employment effects of artficial intelligence',Aug.26,2025,digitaleconomy at stanford edu.

[3]Tyna Eloundou et.al.,'GPT is GPTs: an early look at the labor matket impact potential of karge language models',Working Paper,Univ. of Pennsylvania,March 27,2023