組織をダメにする人
2025.08.02
・会社や官庁などの大組織には、人当たりが良くて、上司に気に入れられて出世するが、仕事が全くダメで組織の活力を奪う人がいる。
・旧日本海軍に大角岑生という海軍大将(1876-1941)が居た。彼は上海事変の功績により男爵を授けられた。いくつかの本を読むと、この人は失礼ながらそれに該当するようだ。以下例をあげる。
(例1)515事件のとき(1932)
「若手士官数名が首相官邸に押し入り、総理大臣を射殺するという海軍史上前代未聞の不祥事であったにもかかわらず、これの処理にあたる海軍大臣大角岑生の態度は終始煮え切れなかった」(参考文献[1],p80)。このとき大角は大臣を辞任するが、予備役とならず現役にとどまる。
(例2)226事件の時(1936)
「迫水は大角海相に対して・・・岡田総理の生存を伝え、その救出のため海軍陸戦隊の出動を頼むと・・・『君、僕はこの話は聞かなかったことにするよ』と向こうに行ってしまった」(参考文献[2]、p93)。
(例3)三国同盟加盟の可否にあたっての海軍首脳会議(1940)
「軍令部総長:伏見宮『ここまできたらしかたがないね』
軍事参事官:大角岑生『軍事参事官としては賛成である』、・・・この後山本五十六が『ただ心配に堪えぬことがあるのでお尋ね申し上げます。この条約が成立すれば、アメリカとの衝突する危険はかなり増大します。現状では航空兵力が不足し・・・ならばその不足を補うためにどういう計画変更をやられたか、この点を聞かせていただきたい』この発言を豊田次官は完全に無視}(参考文献[3]、p289)。
・特に例3に挙げた対米戦に関する山本五十六の質問を海軍上層部としてまったく封殺したのは、戦略的にみても大問題だったろう。これは80年以上前に起こったことだが、今の日本の大組織にも同じような人物が活躍しているのではないか。
(参考資料)
[1]阿川弘之、「井上成美」、新潮社、1992
[2]山田邦紀、「岡田啓介」、現代書館、2018
[3]半藤一利、「昭和史」、平凡社、2004