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AIの現状と将来

AIの現状と将来

 2025.05.17

 

・AI進化のスピードが止まらない。これは、たとえて言えば日本の戦国時代にどの武将が天下を取るかをめぐる戦いでせめぎあう状態と似ている。こういう時は大局的判断(戦国時代なら”だれが次の覇者かの見極め”)が大事だ。

 

・その意味で最近読んだウォールストリート・ジャーナルの記事は時宜を得ている(参考文献[1])。以下それに従う。

 

 *AIサイトへのビジター数でいうと、チャットGPTが圧倒的で、それをディープシーク(中国)やジェミニ(グーグル)が追っている。コパイロット(マイクロソフト)やパプレキシティーはその下になる。

 

 *アーティフィシャル・アナリシスのデータによると、能力面ではグーグル、XAI(マスクのAI企業)、オープンAIが拮抗している(2025年)。それをディープシークとアンソロピック(2021年にオープンAIの元従業員が設立)が追っている。

 

・AIの進展が今後頭打ちになるかどうかは議論のあるところだが(参考文献[4])、今の流れはしばらく続くとみてよいだろう。

 

・こうしてみていくと、この分野でも日本の影は薄い。実は1970年代にはニューラルネットの研究で日本は世界を凌駕していた。その代表として福島邦彦教授の名前がよく引用される(2021年バウワー賞)。しかしその後は音なしになってしまった。ケイド・メッツの「ジーニアス・メーカーズ」を読むとよくわかるのだが、1990年代から2000年代にかけてAIは冬の時代を迎える(参考文献[2]、p430)。この時期にカナダのヒントン教授(2024年ノーベル賞)はあきらめずに、ニューラルネットの研究を続け、ディープラーニングを生み出した。これが現在のAI発展の源となっている。ひとつのアイデアが見つかったら、人が何と言おうと、それの実現に全力を投じるのが成功への秘訣だろう。

 

・なおヒントン教授は、誤差逆伝播法に関する研究で有名だ(1986年)。これについてのわかりやすい解説は参考文献[5]参照。

 

(参考)

[1]Nate Rattner & Deepa Seetharaman,"Here's How Big the AI Revolution really is,in four charts",WSJ,2025.05.07

 「AI革命、実際どれほどの勢いか? チャートで見る」

[2]ケイド・メッツ、「ジーニアス・メーカーズ」、小金輝彦訳、CCCメディアハウス、2021

[3]Parmy Olson,"Supremacy",Macmillan,2024

[4]Gary Marcus,”Deep Learing is Hitting a Wall”,Nautilus,March 10,2022

[5]Tariq Rashid、「ニューラルネットワーク自作入門」 ,新納 浩幸訳、マイナビ、 2017