マスクの行政改革とCOBOL
2025.04.19
・イーロン・マスクが行政改革に乗り出して(DOGE:政府効率化省)、様々な波紋が広がっている。表題のCOBOLとはコンピュータ言語のひとつで1970年代ごろ企業でよく使われていた。
・DOGEはコンピュータシステムの近代化を試みている。具体的には、社会保障局(SSA)のコンピュータシ使用言語を数か月でCOBOLからJAVA(プログラミング言語)に移行することを計画している。これを指揮するのはスティーブ・デービス(Steve Davis)。彼は現在45歳でマスク側近のナンバーワン、マスクがツイッター買収の際、ツイッターのコスト削減に大きく貢献したといわれている。
・それにしてもCOBOLとは懐かしい名前だ。筆者がアメリカでIBMを使ってプログラムを描き始めた1970年代初期、科学技術計算にはフォートラン、会計システムなどの経営システムのコンピュータ化にはCOBOLと言われてきたからすでに50年以上の歴史がある。
・コンピュータ言語は、その用途やコンピュータハードの変化(計算容量の拡大や、ネットワーク化など)により日々進化している。プログラマーもそれに合わせて使う言語を変えていく。筆者の場合、フォートランから始めて、パソコン時代になってからベーシック、クイック・ベーシック、ラティスC、VB.netと変わり、今はパイソンで書いている。新しい言語は書くのが容易だし、変化する用途にも合っているからだ。
・その意味で、マスク側近が、社会保障局(SSA)のコードを古い言語を捨て新しいものに置き換えるのは理にかなっている(参考文献[2])。元SSAのエンジニアは、「SSAのシステムは『針とダクトテープでつなぎ合わせれている』ような状態であり、不用意に一部を取り除くと全体が崩壊する可能性がある」と警告している(参考文献[1])。だからこそプログラム全体の書き直しが必要になる。
・以上はアメリカの話だが、日本の政府関連プログラムもひょっとしたらレガシー言語のCOBOLなどを使っているのかもしれない。財政効率化のためには、マスクのような乱暴な”改革”が必要ではないか。
(参考)
[1]Gigazine,”イーロン・マスク率いるDOGEが6000行ものCOBOLコードを含む社会保障局のシステムを生成AIでわずか数か月の内に移行させようとしており危険性が指摘されている”、2025.04.01
[2]Shawn Stanford,"The Bath Fitters of COBOL",Medium,April 07,2025
[3]ゲーマーときどきエンジニア、「新卒エンジニアにCOBOLをさせる会社はブラック企業である、と断言する3つの理由」、Hatena Blog,2019.01.03
[4]Makena Kelly,"DOGE plans to rebuild SSA code base in months,risking benefits and system collapse",Wired,Mar.28,2025