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ディープシーク騒動

ディープシーク騒動

 2025.02.01

・先週末、ディープシーク旋風が株の世界を駆け抜けた。中国AI企業のディープシーク(DeepSeek)が新しいAIモデル(R1)を無料公開したため、アメリカのAI企業(エヌビディアやブロードコム)の株価は17%低下し、その影響はマイクロソフトやアルファベット(グーグルの親会社)の株価にも波及した。このR1はオープンAIのチャットGPTを抜いて、iOSAppストアで最もダウンロードされた無料アプリとなった。

 

・アルトマン率いるオープンAIのGPT-4の訓練には1億ドル程度かかったのに対し、ディープシークのそれは560万ドルに過ぎなかったといわれている。またディープシークはアメリカの半導体制裁を乗り越えるためエヌビディアの低性能品を使用しているという。

 

・これまでAIの開発には膨大な資金がかかり、かつエヌビディアの高性能なチップがその運転のためには不可欠と思われてきた。ディープシークは、この神話を打ち砕いたといえる。ディープシークのR1が問題解決に優れており、オープンAIのo1推論モデルにくらべ、一回当たりの使用コストは数分の1であるという。

 

・ディープシークの創設者、梁文鋒氏(39歳)は浙江大学でコンピュータ科学を専攻し2010年に卒業、その後ヘッジファンド・ハイフライヤー(High-Flyer)を創設した。これで財を成したのちに生成AIに転向し、2023年にディープシークを立ち上げた。その目的はAGI(汎用人工知能)をつくること。ディープシークは他のスタートアップと異なり、資金は自社で賄い、外部資金に頼っていない。

 

・この成功に刺激されて、チャットGPTを超えるようなオープンソースの生成AIが欧米でも開発されるだろう。そろそろ各自のPCで小型LLMを動かす時代になったようだ。当方も、自家製ソフトにこうした小型LLMの導入を考えているので、R1の今後の動向に注目していきたいと考えている。

 

・最後に素朴な疑問。「なぜ日本のIT企業や学者がディープシークと同じことができなかったのか」。

 

(参考)

・Stu Woo and Raffaele Huang,"How China's DeepSeek Outsmarted America",WSJ,Jan.29,2025    「中国ディープシーク、どうやって米国を出し抜いたか」

・Eleanor Olcott and Ziling Wu,”Lian Wenfeng,the DeepSeek founder panicking the tech world”,FT,Jan.30,2025

・Hugging Face,"Open-R:a fully open reproduction of DeepSeek-R1",Jan.28,2025

・China Talk,"DeepSeek:The Quiet Giant Leading China's AI Race",Nov.27,2024