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躍進続くBYD(比亜迪)

躍進続くBYD(比亜迪)

  2024.11.30

・中国の自動車メーカーBYDの進撃が止まらない。本年の生産台数は400万台に届こうとしている。日本車と比べると、2023年の販売台数はトヨタ1,030万台,ホンダ410万台、日産344万台などだから、BYDはすでにホンダ、日産のレベルに達していることがわかる。

 

・同社は中国のEVおよびPHVで3割以上のシェアを確保しているようだ。しかも競争力を高めるため、部品等のサプライヤーに価格引き下げ要求を出したそうだ。その行動は、かっての意気盛んだった日本メーカーを想起させる。

 

・日本でもだんだんBYD車を見かけるようになった。長澤まさみの、「ありかもよ・・・」というテレビ・コマーシャルを見た人も多いだろう。品質も侮れない。同社のシール(Seal)は日本カー・オブ・ザ・イヤーの2024年度「10ベストカー」の一つに選ばれた。

 

・商品比較サイトの価格コムを見ていて気付いたのだが、BYDはOTH(over the air)を利用しているらしい。つまりクルマの性能のアップデートはネット経由で行われるのだ。これはテスラと同じ仕組みだ。

 

・こうしてみると日本車はなかなか難しい状況に立ち入りつつある。かって家電品を思い出す。昔はテレビや洗濯機は、各メーカーの販売店を通じて売られていた。松下電器のナショナルショップ、東芝の東芝ストアなどが街角にあったのを覚えている人も多いだろう。これが大型家電販売店の登場で、一挙に変わった。ネット販売がこの傾向を加速する。いまではこうした街の販売店で家電品を買うのは、老人世帯などに限られよう。

 

・クルマの場合も同じだ。現在日本では、販売店で車を買い、通常その整備を販売店に任せている。販売店はその手数料で息をついている。たとえばカーナビの更新を考えてみよう。(現在では事情は異なっているかもしれないが)、車を販売店に持ち込み数時間から数日掛けて(有料で)更新が行われる。

 

・OTH(over the air)は、これをネット経由で自動的に行ってくれる。そこに販売店の入る隙間はない。メーカーにとってはそれだけコスト低下につながるというわけだ。

 

・余談になるが、当方も最近国産車から外車に乗り換えた。それでわかったのは、法定の1年点検以外、3か月点検や6か月点検が不要だということだ。外車の場合オイル交換は必要な時にワーニングがつくので、その時に行えばよい。またタイヤの空気圧も減ってくればワーニングがつくので、ガソリンスタンドに行けばよい。かくて日本車における販売店の各種サービス(有料)は”過剰”であることが分かった次第だ。

 

・BYDはテスラと同様各種不具合までネット上から修復してしまう。いったんこのシステムに慣れると、日本型システムに戻ることはないだろう。メーカーも大変だが、系列販売店にとってはもっと厳しい冬が来るのではないか。

 

(参考)

・BYD Company Limited 2024 Third Quartery Report(2024-10-30)

 https://www.bydglobal.com/en/InvestorAnnals.html

・Gigazine,「中国のEVメーカー・BYDはテスラのギガファクトリーを凌駕する巨大工場を保有している」,2024.11.25

・Gloria Lin,"China's EV price war set to intensify next year as BYD squeezes suppliers",FT,Nov.28,2024