インド散見
2023.09.16
・所用があり、インドに行ってきた。インドは広いが(日本の約9倍)、今回訪れたのは南インドだ。ITの中心地バンガロールよりもっと半島の先端部と言えば、なんとなくイメージが湧くだろう。旅行目的の一つは、ドバイー南インドーインドネシア文化圏のうねりを体感することだ。
・初めての体験だったが、インド人と話してみて2つのことを感じた。それは”懐かしさ”と”ふくよかさ”だ。
・”懐かしさ”というのは、たとえばこういうことだ。インドの古典舞踊カターカリを見たとき最初の印象は「なんだ歌舞伎じゃないか」というものだった。しかしこれは順序が逆で歌舞伎のような芸能がインドから日本に伝えられたというのが正しいだろう。つまりインドにいると、われわれの文明の根源に立ち返るような気持が湧いてくる。
・”ふくよかさ”というのは、対人関係の在り方だ。たとえばわれわれが欧米人と対するとき、まずお互いに品定めし、そのうえでにっこりと握手をする。つまり最初の儀式として対峙段階が存在する。ところがインド人の場合は、これがない。なんとなく相手に包み込まれるような感じがする。ちょっと思ったのだが、お釈迦様というのはこういう存在なのかもしれない。いずれにせよ、こちらがちょっと困っていると、誰かが近寄ってきてさりげなく助けてくれる。面白い体験だった。
・今インドは発展のるつぼだ。日本でいえば東京オリンピックの頃(1964年)を思い出す。しかし今はITの時代だから、インドはそちらに注力している。たとえばテスラの工場誘致を成功させた。この面でも日本は遅れをとっている。そういえば宇宙開発でもインドは月面着陸に成功した。現地の新聞を読むと、その開発に携わったのは国産技術者らしい。これも1960年代から1970年代にかけての日本とちょっと似ている。
・話は飛ぶが、インドで走っている乗用車を見ると、たしかにスズキが多い。しかし次はヒュンダイのような印象を受けた。トヨタ車は高級車といった感じがする。いずれにせよ、クルマのEV化の波が、日本車に不利にならなければ幸いである。
・日本と言えば、今回の旅では、デリーの空港を除いて日本人には一人も出会わなかった。南インドの先端に行ったからかもしれないが、ちょっと寂しい感じがした。面白かったのは、先端部の島にあるタミール詩人の立像を見に行った時のことだ(カニャークマリ)。ここは日本でいえば鎌倉のようなところで、インドでもお上りさんがたくさん見に来ていた。彼らは日本人などは見たこともないらしい。誰かが近寄ってきて、「どこから」と聞くから「日本だ」と答えたら、周りの仲間に、「オイ日本からだってさ」と触れ回っていた。また新婚風の男女がやってきて、写真を撮ってよいかというので、「どうぞ」と答えたら、よろこんで 我々の姿を撮っていた。おそらく故郷に帰って「外人がいたよ」などと説明するのだろう。日本の鎌倉だって昔は外人が見に来ると、皆がしげしげと眺めたものだ。
・インドは広いし、長い歴史を持っている。ちょっと見ただけで、何かがわかるとは思えないが、旅の印象を書いてみた。