EV充電器をめぐる争い:テスラの勝利
2023.08.05
・米国ではEVが急速に普及し始めている。その充電器をめぐる争いでテスラが勝ちを占めたようだ。本年6月、フォードに続き、GMも自社の次世代EVにテスラの充電規格(NACS)を採用すると発表した。ちなみにNACSとはNorth Aamerican Charging Standardの略で、もともとTPC(Tesla Proprietary Connector)と呼ばれてきたものである。
・IT革新の世界は変化が速い。変化の先を見通して、インフラを抑えていくのが、この分野で勝ちを収めるためには不可欠だ。テスラはEVの充電システムでもこれに成功したことになる。株価はそれに対して、プラスに反応した。さらにテスラは、次世代EV充電に関して、ワイアレス充電の制覇も狙っている。その一環として、つい最近同社は、最近西独のWiferion(2016年創業、非接触充電システムを開発)を買収した。
・こうした流れを見ていくと、気になるのは日本発のEV充電用規格CHAdeMoだ。これは2010年に日本の自動車メーカーや東電が設立したCHAdeMo協議会が開発に携わってきた。
・その技術的問題点は以下の通り(EVsmartブログによる)、
*急速充電と普通充電が別コネクタで混乱しやすい、
*課金システムが規格にビルトインされていない、
*プロトコルに、問題判別に必要な車両情報が含まれない、
*コネクタ規格が1993年制定と古く、重くて出力が低い、
*超急速充電が一般的になった現時点でも、最大出力は150kw程度、しかも90kwを超える高出力は15分しか継続できない(テスラ方式はすでに水冷ケーブルを装着し、この問題を克服)。
・日本の場合、関連メーカーが寄り集まって開発を行うため、合意に達する規格は保守的になりがちで、最先端の技術やアイデアが盛り込まれにくい。それにしても日本型技術開発の欠点がまた一つ明らかになったようで、残念なことではある。
(参考)
・Stepen Wilmot,"Tesla has won the EV-charger wars",WSJ,June 10,2023
「テスラが勝利したEV充電めぐる争い」
・Gigazine,「テスラが電気自動車向けのワイアレス充電メーカー「Wiferion」の買収を完了」,2023.08.04
・EVsmartブログ、「テスラが自社充電コネクター規格を公開し「北米標準」目指す。日本はどうすべきか?」、2022.12.02、