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アメリカにおけるインフレ動向とその原因

アメリカにおけるインフレ動向とその原因

 2023.07.01

・日本の消費者物価は、2021年ごろまで落ち着いていたが(2020=100,2021=99.8,2022=102.3)、2022年ごろから上がり始め、直近データでは105.1(2023年5月)まで上昇した。これをどう見るのか、そしてそれをどう抑制していくのか、政府や日銀当局は厳しい選択を迫られよう。

 

・ちょうど良いタイミングで、アメリカの最近のインフレに関する定量的分析がバーナンキとブランシャール教授によって出された。

 

・そこでの結論は、「コロナ渦による供給ショックや原油高が2021年にインフレを誘発し、その後政府の刺激策と低金利により経済が過熱(バイデン大統領によるAmerica Rescue Planによる1.9兆ドル)、インフレが進んだ」というもの。

 

・詳しい内容は、論文を見てほしい。彼らは6式からなるモデルを構築し(賃金関数3式、物価関数1式、インフレ期待関数2式)、これを1990年から2019年に至る四半期データを用いて推定し、分析を行っている。

 

・このモデルで面白いのは、物資の需給やサプライチェーンのかく乱を表す変数にグーグル検索を用いていること(”チップ不足”、”クルマ不足”など)。

 

・またこの分析でちょっと不満なのは、金利が明示的に入っていないこと。これがないと、FRBがどこまで金利をあげたら、アメリカのインフレは収まるかの目途がわからないからだ。

 

・日本でも、インフレ傾向が強まる現在、こうした分析が必要だろう。政府はコロナショックで財政的な大盤振る舞いを行い、日銀は当面低金利政策を続けるという。その結果はどうなるだろうか。

 

・アメリカではインフレが問題だが、それでもコロナショック期を除いて経済成長は続いている(2019=2.3%,2020=-2.8%,2021=5.9%,2022=2.1%)、これに対し日本経済は低迷を続けている(年度ベースの成長率。2019=-0.9%,2020=-4.9%,2021=2.3%)。ちなみに2021年の成長率は、前年のマイナス成長の反動。成長もなく、物価が上がるというのはまさにスタグフレーションに陥っていることになる。このままでいくと、国力の低下を反映して、為替レートは徐々に円安方向に進むことになろう。

 

(来週は所用のため、一回休みます)

(参考)

・Greg Ip,"Why inflation erupted: two top economists have the answer",WSJ,May,24,2023

  「インフレ急騰、有力エコノミスト2人が結論」

・Ben Bernanke,Oliver Blanchard,"What caused the U.S.Pandemic -era Inflation?",Hutechins Center at Brookings,May 23,2013