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将来危ぶまれる日本の自動車工業

将来危ぶまれる日本の自動車工業

  2023.05.28

・米国在住のIT専門家、中島聡氏のブログは役に立つ。彼の議論が、日本の評論家諸氏のそれと異なり、日本の現状維持勢力(産・官・学)に忖度していないからだ。今回はEVを取り上げる。以下の2段落は中島氏のブログで取り上げられていた田巻一彦氏のコラムを参考にしている。

 

 *アメリカではこの四月に設定された電気自動車(EV)税優遇の対象に日本車が外れた。これは最大7,500ドル(約百万円)の税額控除を受けられるというものだが、その対象はアメリカメーカー11車種のみで日本、欧州、韓国製のEVは対象外となった。

 

 *現在北米における日本車のシェアは3割を超えているが、EVでは大きく立ち遅れており、EV化が進むと、日本車のシェアは低下する。日本はEV車開発に遅れを取っており、EV化の波に乗り切れていない。日本の輸出はクルマ頼みだ、これがダメになると、日本経済にとって正念場が近付きつつある。

 

・日本のクルマ生産の中心地は愛知県だ。当方の試算によると、クルマが失速したときの

 

 *愛知県の移輸出の減少は、2024年4.4兆円、2025年5.9兆円、

 

 *愛知県GDPの減少は、2024年4.5兆円、2025年6.5兆円(2025年で約15%減)、

 

 *愛知県の輸送機械部門の減少額は12.0兆円(2025年生産額、BAUに比べ30%減)、

 

 などとなる。

 

・日本の場合、惜しかったのは、燃料電池車(FCV)開発に時間と資金を取られて、EV化に遅れを取ったことだ(Lambert論文参照)。要するにセンスが悪いわけで、テスラ率いるイーロン・マスクが燃料電池のことをFuel CellではなくFool Cellだとからかったのは記憶に新しい。問題はEV化の開発スピードは、在来型自動車のそれではなく、ケータイやクラウド・サービスのように桁違いに早いことだ。したがって、IT革新に不慣れな日本の自動車メーカーが、この遅れを取り戻すことは難しい。さてどうしたものか。

 

(参考)

・中島聡、「Life is Beautiful」、2023年4月25日号

・田巻一彦、「コラム:米EV税優遇、日本勢直撃、数年後の大幅円安招くリスク」,Reutesrs,2023.04.20

・Yahoo!ニュース、「三菱自動車「226億円損失」の衝撃 EV加速止まらぬ中国でエンジン車”現地生産停止”が意味するものとは」、2023.04.29

・Lambert F.,"Toyota admits 'Elon Musk is right' about fuel cell,but moves forward with hydrogen anyway",Electrek,Oct.26,2017