外車に乗る
2023.04.29
・外車とは国産車に対する言葉で、ドイツ車やアメリカ車のような輸入車のことだ。
・筆者は長年国産車を愛用してきた。最初は親のおさがり、次いで子供が大きくなるにつれT社やH社のワゴンタイプを使ってきた。
・大体8年程度で新車に乗り換えてきたが、現在のクルマもその時期に来たので、乗り換えを検討した。特に当方はクルマの安全性に興味があるので、どうしても上位機種が購入対象となる。販売店に行ってみると、こうした車種は「半導体不足でいつ入るかわかりません」とのこと。
・やむなくドイツ車の販売店に立ち寄ってみると、今乗っているワゴン車と同格のクルマがあるという。試乗してみると乗り心地は悪くはない。購入条件もほぼ国産車並みだ。しかもポイントは、「クルマは3-5カ月で来ます」とのことだった。そこで購入契約に踏み切った。初めての外車オーナー体験だ(笑)。
・親は外車も使っていたから、その乗り心地は知っていた。しかし自動車大国の日本で、まさか自分が外車を買うことになるとは思ってもいなかった。しかし考えてみれば、自分たちの子供も外車に乗っている。外車に乗るのは、日本ではすでに当たり前のことになっているようだ。
・たしかに身近の日用品も外国製だらけだ。ケータイはIphoneだし、テレビはネットフリックスだ。新聞もウォールストリート・ジャーナルやフィナンシャルタイムズしか読まない。
・これはミクロ的に言えば、輸入代替の進行だから、特に経済学的に見ておかしくはない。しかしマクロ的にみると、日本経済にとって影響は大きい。日本は従来輸出で稼いできた。1970年代以前は鉄鋼や造船、1980年代以降は電気製品やエレクトロニクス、そして現在は自動車が輸出の中心だ。こうした輸出産業のおかげで食料やエネルギーを外国から買うことができる。しかし今回見たように、クルマですら輸入車の方が優位に立ち始めている。これは日本経済の世界における地位低下につながるのではないか。
・このように書いてきて、アルゼンチンのことに思い至った。以下デロングからの引用(Bradford Delong、p352-)。
*1913年にはブエノスアイレス(アルゼンチンの首都)は世界上位20都市に入っていた。
*1929年には、アルゼンチンは世界の5大経済大国の一つであり、典型的な市民はクルマを保有していた。
その後同国は、政治的混乱のために経済低迷を続ける。ノーベル賞エコノミスト、サイモン・クズネッツは不気味な言葉を残している。「世界には4つの国しかない。先進国と途上国、そしてアルゼンチンと日本である」(There are four kinds of countries in the world:developed countries,undeveloped countries,Japan and Argentina)。これが恐ろしい皮肉にならなければ、幸いである。
(参考)
・Bradford Delong,Slouching Towards Utopia,Badic Books,2022