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イーロン・マスクの脱MBA論

イーロン・マスクの脱MBA論

   2023.02.04

・ちょっと前のことだが、テスラのイーロン・マスクが経営におけるMBA(ビジネススクールの学位)不要論をぶち上げて問題になった。彼は企業にMBA卒業者が増えたために、創造的な思考や真に顧客が求めているものがわからなくなっているという。

 

・実はIT関連の本を読んでいた時、「著者はプログラムや現場のことを知らないな」という印象を受けた。筆者のような現場のプログラマーから見れば、議論が上滑りなのだ。その著者というのが欧米の著名ビジネス・スクールの先生だった。ということは、ビジネス・スクールではいろいろ最近のトピックを教えてくれるが、それだけのことで、議論の本質には迫っていないのではないか。そんな疑問を抱いた。それでマスクのMBA不要論を思い出したわけだ。つまりトピカルな話題を追いかける高等教育は、IT専門家養成に役に立たないのではないか。

 

・実はマスクの議論には裏付けがある。著名なIT経営者で、学校を中退した人々は、セルゲイ・ブリンとラリー・ページ、イーロン・マスク(スタンフォード大)、ビル・ゲーツとマーク・ツッカーバーグ(ハーバード大)、スティーブ・ジョブス(リード・カレッジ)、ミカエル・デル(テキサス大)など数多い(Susskind,p161)。

 

・高等教育の在り方に、より根源的な批判を展開するのは、IT企業家のピーター・ティエールだ。かれは高等教育は単にお飾りでしかない。皆がそこに進むのは、単にそれが社会的習慣だからだと、喝破している。そして彼が設立したティエール財団(Thiel Fellowship)では、大学に行く代わりに起業に踏み切った若者に10万ドルを提供している。すでにそこから60の企業が生まれ、その価値は合計で11億ドルに達したという(Susukind,p162)。

 

・日本は相変わらず周回遅れで、大学にIT関連講座を開くことが流行りになっている。これは要するに、日本に本物のIT企業家やプログラマー、CPU設計家が居ないからではないか。ちょっとそんなことを思った。

 

(参考)

・Patrick Thomas,"Elon Musk Decries 'M.B.A.-ization' of America",WSJ,Dec.10,2020    「テスラCEO,米企業の「MBA化」を批判」

・Daniel Susskind,A World without Work,Metropolitan Books,2020

  (邦訳あり)