イーロン・マスクのツイッター改革
2022.11.20
・マスクは本年10月27日にツイッター買収を完了したが、矢継ぎ早やに同社の改革を進めている。
・まず彼はツイッター本社に戦略室(war room)を開設した。そこに信頼すべき”お仲間”を呼び込んで改革にあたらせている。具体的には大量解雇と新製品の開発だ。これによって彼はツイッターの停滞したビジネスに活を入れようとしている。
・”お仲間”としては、ジェイソン・カラカニス(Jason Cacanis)やデービッド・サックス(David Sacks)、アレックス・スピロ(Alex Spiro)などがいる。カラカニスはセコイア・キャピタル(アップル、グーグル、ヤフーなどへの投資で知られる)で名を成し、最近ではロビンフッド(アメリカのフィンテク)やウーバーなどの支援で知られる。
・デービッド・サックスは、ペイパル・マフィア(マスクもペイパルの創設に関わっている)の一人で、現在はクラフト・ベンチャーのゼネラル・パートナー。
・アレックス・シャピロは法律担当で、ツイッターの法務関係を担当する。ハーバード・ロー・スクール出身。
・こうしてみると、マスクの新事業における”お仲間”の重要性に気づかされる。話は飛ぶが、YouTubeの場合にも、同じことがいえる。YouTube創設の核となったのはチャド・ハーリー、スティーブ・チェン、ジョーカリムの3人だ。彼らの結びつきは、イリノイ大学コンピュータ・サイエンス学科にさかのぼる。チェンはそこに入学し、マックス・レブチンに出会う。彼はペイパルを創業し、そこにチェンを誘った。彼がペイパルで出会ったのがチャド・ハーリーとジョーカリムだ。YouTubeは、レブチンの紹介でセコイア・キャピタルが350万ドル投資したことで動き始める(室田本、第1章)。
・つまりマスクの”お仲間”も、その共通点としてペイパルやセコイア・キャピタルなどがあがっている。これを見ると、なぜ日本がIT革新の波にうまく乗れないかが、理解できる。それは日本人が、こうしたインナー・サークルに入っていないからだ。この意味で心配なのは、EV(電気自動車)の進展だ。これもスタンフォード大学のセバスチャン・スラン(Sebastian Thrun)などDARPAのGrand Challengeからのお仲間が中心で、そこには日本人の影は薄い。
・話はマスクのツイッター改革に戻る。彼の徹底改革に比べると、日本の”政治経済改革”はまだるっこしい。いっそイーロン・マスクを招待し、全権を委任してこの国の迅速な改革を進めてもらえないだろうか。
(参考)
・James Vincent & Alex Heath,"Elon Musk tells staff to prepare for 'difficult times ahea' and ends remote work",The Verge,Nov.10,2022
・Hannh Murphy &Ian Johnson,"How ElonMusk's 'war room' of advisers transformed Twitter",Nov.05,2022
・室田泰弘、「YouTubeはなぜ成功したのか」、東洋経済、2007