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ゼレンスキー大統領の印象

ゼレンスキー大統領の印象

・英国のジャーナリストで社会人類学者のジリアン・テットがゼレンスキー大統領のディナーにおけるスピーチを思い出しながら、その人となりを述べている。ゼレンスキー氏は、言うまでもなく今戦争のさなかにあるウクライナの政治的リーダーである。

 

・ジリアン・テットはタジキスタン(中央アジア、旧ソ連に属した)でフィールドワークの経験があり、ロシア周辺圏の政情に詳しい。

 

・ウクライナのゼレンスキー大統領はもともと法学を専攻したが、卒業後コメディアンに転じる。制作会社(Kvartal95)を設立。「国民の僕」というテレビ番組を作成。かれはその中で一介の歴史教師が素人政治家となり、大統領に当選し政治改革を進めるというドラマの主役を演じた(ウィキペディアによる)。

 

・そして実際に2019年に大統領選に立候補し、現職のポロシェンコ氏を破って、大統領となる。

 

・ジリアン・テットによると、彼は、コメディアンらしく、ポストモダンをシュールなユーモアとし、それをロシア侵略に対する生き生きとした抵抗道具に変えている。

 

・一番わかりやすいのは、ゼレンスキー大統領が自身の言葉で、このことをユーチューブで語っていることだ。演説はロシア語だが、英語の翻訳がつけられているので、われわれにも理解できる。ぜひご覧いただきたい(https://www.youtube.com/watch?v=Fwzb_JX7u04&t=16s,Ukrainian President Zelenskyy's heartbreaking, defiant speech to the Russian people)。

 

・ウクライナに対する支援は方々から始まっている。EVメーカ・テスラの社長であるイーロン・マスクは、スターリンク(衛星通信システム)をウクライナで稼働させた。これによってウクライナ市民はインターネットで世界とつながることができる。それが実現するまでのやり取りが面白い。ウクライナの副首相でIT担当のミカイロ・フェデロフ氏が、マスクに、「貴下は火星を植民地化しようとしている。貴下のロケットがうまく宇宙から帰還しているときに、ロシアはウクライナを占領しようとしてる。・・・ウクライナにスターリンクを使わせてもらいえないか」とツイッターでつぶやいたところ、マスクがこれに応じたということだ。まさにポストモダンだ。

 

・これに対し日本の反応は相変わらず鈍い。日本の外務副大臣は駐日ウクライナ大使の会見申し入れを放置しておいたともいわれる(国民民主党川合孝典参院議員の国会質問)。副大臣は否定しているので真相はわからないが、日本の政治家は政治的も文化的にもちょっと見識が不足しているようにみえる。

 

(参考)

・Gillian Tett,"What I learnt from dinner with Volodymyr Zelensky",FT,March 3,2022

・Sam Raskin,"Elon Musk activates Starlink in Ukraine after vice minister's plea",NewYorkPost,Feb.27,2022