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地球温暖化とメタンガス濃度の上昇

地球温暖化とメタンガス濃度の上昇

  2020.02.27

・メタンガス(CH4)は二酸化炭素(CO2)と並んで温暖化の原因の一つだ。地球温暖化への寄与は2割強と言われている(国立環境研究所)。その温暖化効果は二酸化炭素より強く、温暖化係数(GWP-100,100年間で二酸化炭素の何倍の効果を持つか)は28倍とされている。

 

・最近のネーチャー誌によると、メタンガス濃度は最近”危険なほど早く”上昇しているという。2021年の濃度は1,900PPMを超えた。これは産業革命以前のほぼ3倍の水準である。

 

・メタンの人為的な放出源は、家畜の消化過程、石油や天然ガス採掘時の放出、ごみ埋め立て、湿地における微生物活動などである。

 

・とくに2007年以降、濃度上昇が著しい。その原因として、もしかしたら、温暖化が湿地帯(たとえばブラジルのパンタナル湿地は世界最大級の熱帯湿地でメタンガスの主要放出地である)からのメタン放出を早めるという、いわゆる温暖化のポジティブ・フィードバックが効き始めているのではないかという疑問を科学者たち持ち始めている。

 

・研究者は、メタンの放出源を探るため、同位体炭素の含有量を調べる。炭素の多くはC12だが、一部にC13を含む。湿地や動物起源のメタンは、石油や天然ガス採掘時に放出されるメタンよりC13の含有量が少ない。産業革命以来C13の含有量は増えてきた(石油や天然ガス採掘時のメタンが多い)が、2007年以降その含有量は減ってきているという。これが湿地などからのメタン放出増大を疑う理由の一つだ。NOAA(アメリカ海洋大気庁)の研究者Xin Lan博士は2007年以降のメタン放出増加の85%は微生物起源ではないかと推定している。もちろん微生物起源の元はさまざまであり必ずしも湿地起源とはいえない(湿地、家畜による放出、埋め立てなど)。

 

・ロンドン大学のニスベット教授(Euan Nisbet)はグローバル・メタン・バジェット(MOYA,世界中でメタン濃度を測る)のリーダーだった。つまりメタン濃度測定の専門家だ。彼は、「温暖化が温暖化を促進しているか。これはとてつもなく重要な疑問だ。まだ確かなことはわからないが、どうもそうらしく見える(it very much looks that way)」と述べている。

 

・もしも地球が、「温暖化が温暖化を呼ぶ」というポジティブ・フィードバック過程に入り始めているなら、早急に厳しい温暖化対策をとらねばならない。通常いわれている価格メカニズムの活用などでは、規模も時間も間に合わない。筆者の考えでは、IT革新をうまく活用して経済構造を脱産業化することしかないと思われるが。

 

(参考)

・Jeff Tollefson,"Scientists raise alarm over 'dangerously fast' growth in atmospheric metan",Nature,08,Feb.2022

・Katy Stech Frek ,"In Clampdown on U.S, methane Emissions,Belching Cattle get a pass",WSJ,2022.02.15

   「米政権のメタン排出規制、牛のゲップは対象外」

・気象庁、「メタン濃度の経年変化」,2021.10.25

・国立環境研究所、「世界のメタン放出量は過去20年間に10%近く増加」、2020年8月6日、プレスリリース