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第二の冷戦時代とAIのインパクト

第二の冷戦時代とAIのインパクト

・最近ヘンリー・キッシンジャー、エリック・シュミット、ダニエル・ハッテンロチャーの共著になる、「AI時代と人間の未来」(The Age of AI and Our Human Future、未邦訳)が出版された。ちなみにキッシンジャーは米ソ冷戦時代のアメリカ国務長官。エリック・シュミットはグーグルの創始者。ハッテンロチャーはMITのシュバルツマン・カレッジ・オブ・コンピューティング(ごく最近できたコンピュータ関連の研究大学)学部長。

 

・手元に届くのが遅れたため、読みだしたばかりだが、その論旨はすでにフィナンシャル・タイムズ紙上でエドワード・ルースが取り上げている。彼はキッシンジャーとのインタビューを通じて本書の内容を紹介している。

 

・そこでのポイントは、アメリカも中国もAIが何をもたらすかに関してまだきちんと理解していない、というものだ。キッシンジャーは、これは第1次世界大戦時のドイツと英国の関係に似ているという。当時は、両者ともに対手に関する情報が不足していたため、ちょっとした事件が世界大戦の引き金になってしまった。これに対して冷戦時代の米ソは、キューバ危機のあと相互交渉により、世界大戦勃発のリスク低下に努めたという。

 

・これに関連してちょっと気になることが最近アメリカで起こった。それはペンタゴンがAI責任者に据えたニコラス・チャリアン氏が急に辞任したことだ。彼は37才、フランス生まれで、AIの天才だ。残念ながら、こうした天才をアメリカ軍部はうまく活用できなかったようだ。チャリアン氏によれば、「アメリカがみすみすこの分野で中国に負けるのを見たくない」そうだ。

 

・話は変わるが、最近筆者もプログラム開発上、この分野の最先端に触れざるを得なかった。本当に驚いたのは、その変化の速さだ。半年前のソフトがすでにバージョンが古くて使えなくなっている。ともかく世界中のプログラマーが寄ってたかってこの分野のソフト改良に励んでいる。このため複数ソフトを組み合わせて使うときに、それぞれのバージョン指定が不可避になる。そうでないとソフト同士で矛盾が起きてしまい、まるで動かなくなるからだ。

 

・実際に触っている人間ですら、そうなのだから、これが政治家や官僚になったらどうだろう。キッシンジャーが警告するように、”無知による悲劇の発生”が避けられなくなってしまっているかもしれない。

 

(参考)

・Henry Kissinger,Eric Schmidt,Daniel Huttenlocher,The Age of AI and Our Human Future,Little,Brown and Company,2021

・Edward Luce,"US and China must heed Kissinger's stark warnings",FT,Nov.05,2021・Katrina Manson,"US has alerady lost AI fight to China, says ex-Pentagon software chief",FT,Oct.11,2021

・大城信晃、松村優哉、関満徳、”AIのこれまでとこれから”、WEB+DB PRESS,Vol.123,2021.07