PCR検査やモデルナの開発者
2021.09.04
・今やPCR検査やモデルナワクチンといえば、われわれ素人でも毎日目にする言葉になっている。しかしそれらを開発した科学者のことはあまり知られていない。
・PCR検査(ポミラーゼ連鎖反応,Polymerase ChainReaction)を発見したのはキャリー・マリス(Kary Mullis)というアメリカ人だ。かれはかなりぶっ飛んだ人間で、マリファナもやるカリフォルニアのサーファーである。PCRの発見もガールフレンドを乗せてドライブ中に、思いついたものといわれている。当初だれもその発見の重要性に気づかなかったが、のちに認められてノーベル化学賞を受賞した(1993年)。その品行から、本人はノーベル賞はもらえないかと思っていたが、ノーベル財団から連絡のあったときは大喜びしたという。
・モデルナ・ワクチンの開発者カタリン・カリコ氏(Katalin Kariko)もいわゆる絵にかいたエリートではない。彼女はハンガリー生まれの科学者で、mRNAに早くから注目していたが、勤め先の米国ペンシルベニア大学では、その業績はほとんど認められなかった。研究費も削られたという。
・彼ら(PCRのキャリー・マリスやモデルナのカタリン・カリコ)に共通するのは、だれも注目しない現象をじっくり追い続け、そして成果に結びつける、しぶとさだ。イノベーションの専門家メリッサ・シリングは、こうしたイノベータの特性を、Quirky(突飛な)と名付けている。これは彼女の本のタイトル(英語版、邦題:「世界を動かすイノベータの条件」)でもある。この本にはテスラやイーロン・マスクなどさまざまなキャラクターが登場しており、一読をお勧めする。
・突出した業績を上げるイノベータの特性はQuirkyだ。。日本では残念ながらこうした(変わった)研究者が生き延びることは難しい。政治家は技術立国とか騒いでいるが、問題はこうした”変な学者”が生き延びる環境を作ることが大事だろう。それがないと、次にパンデミックが起こったときにも、今回のようなコロナ敗戦を繰り返すことになる。
・コロナショックもなかなか収束先が見えてこない。牧野淳一郎氏のツイッターを読むと、今後の動きは、新規感染者のデータだけでは判断できず(十分な検査数が確保されているかが不明)、都の戦略的検査強化事業における陽性率などを見ていく必要があるという。
・一つの希望は、コロナショックに関する最新情報が、世界からネットを通じて直接流れてくることだ。それをどのように消化し、自らの行動に結びつけるかが、今回のコロナショックを切り抜ける決め手になる。
(参考)
・メリッサ・A・シリング、「世界を動かすイノベータの条件」、染田屋茂訳、日経BP,2018
Melissa A.Schilling,Quirky,Public Affairs,2018
・Fedor Kossakovski,""The eccentric scientsist behind the 'gold standard' COVID-19 test,Science,Feb.20,2021
・David Crow,"How mRNA became a vaccine game-changer",FT,May,13,2021
・牧野淳一郎、「東京と日本の現状と今後(2021/8/28)」,ツイッター