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米国環境省のクルマの燃費改善レポートと温暖化防止削減目標

米国環境省のクルマの燃費改善レポートと温暖化防止削減目標

  2021.07.31

・アメリカ環境省の「環境省自動車トレンドレポート」は、燃費改善による自動車の温暖化防止技術の進み方を見る上で参考になる。そこではアメリカで販売される主要14メーカーのクルマの性能が詳しく検討されている。2020年版の主要論点は以下の通り。

 

 *2014年から2019年にかけて、クルマの燃費は、24.1(mpg,マイル/ガロン)から24.9(同)に改善した。

 

 *メーカーごとに見ると、EV(電気自動車)テスラは別格で、同期間に90.2mpgから118(同)に改善した。

 *内燃機関車はEV車に比べ、水準が大幅に異なる。トップはホンダ(27.0mpgから28.9mpgに改善)。次いでヒュンダイ(27.2mpgから28.5mpgに改善),スバル(27.3mpgから28.4mpgに改善)となる。

 

 *ちなみに日産は7位で26.7mpgから27.0mpgに改善、トヨタは10位で25.4mpgから25.8mpgへの改善となる。

 

 *ドイツ車ではBMWが8位(26.1mpgから26.2mpgに改善)、VWが9位である(26.1mpgで変化なし)。アメリカ車は12位から14位と最下位に位置する。これは技術水準だけでなく、販売構成にもよるわけで、大型車が多いと企業単位の燃費は低くなることに注意する必要がある。

 

・なお技術的にEPA目標を達成できなくても、クレジットの購入等でつじつまを合わせることはできる。

 

・これがじつは今後のクルマ屋の収益構造に大きく効いてくる可能性がある。燃費基準を満たすためにクレジットを買うメーカーがあれば、その売り手も存在するからだ。たとえばテスラの2020年度年次報告書をみると、この点が明らかになる。

 

 *売上げ315億ドル、純利益7億ドル。製品別に見ると、クルマの販売台数は約50万台、エネルギー貯蔵施設が300万kwh、ソーラーシステム20万kwなどとなっている。

 

 *自動車関連の売上げは240億ドルだが、それ以外にクレジット収入が16億ドル弱ある。つまり環境基準を満たせないメーカーがクレジットをテスラから購入しているわけだ。これはテスラのエネルギー貯蔵やソーラー関係の売上げ(15億ドル弱)を上回っている。

 

・こうしてみると、温暖化規制に関して、クレジットの購入でつじつま合わせをせずに、テスラ流で本格的に対応しないと、とても勝ち味がないことがわかる。

 

・たとえば日本は、本年4月に2030年のCO2削減目標を、2013年比で46%減とした。クルマの燃費で考えて見よう。簡単のため、2030年に2014年比で燃費倍増を目指すとする。上に上げたEPAの実績(2014年から2019年の燃費の向上率)は年率0.7%弱にすぎない。これに対して、2030年に燃費倍増を目指すとすると、年あたりの必要改善率は6.1%となる。毎年これだけの燃費改善を行わないと、2030年に2014年燃費の倍増は望めない。

 

・これはなかなか厳しい目標だ。テスラはすでにこうした目標をクリアしている。既存の自動車メーカー、とくに日本メーカーはどのようにしてこの壁を乗り越えるのだろうか。内燃機関頼みでは、先が見えてこない時代がやってきたようだ。

 

(参考)

・USEPA,"The 2020 EPA Automotive Trends Report",Jan.2021

・TESLA annual report 2020(10K),2021.02.08

・日経、「どう挑む温室効果ガス46%削減:日本が2030年目標を引き上げ」,2021.04.26