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ニッポン鎖国論?

ニッポン鎖国論?

  2021.07.24

・最近、この国は鎖国状態にあるのではないかと思っている。鎖国と言っても、モノの流れではなく、情報の流れだ。つまり世界の動きがいち早く正確に入ってこない感じがする。

 

・たとえば、コロナ感染者数予測だ。われわれは米ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)の予測を、計画立案の基礎資料として利用している。それが示す半年後の予測数はほぼ適切だ。しかし日本の報道機関が明確にこれを引用した例は余り知らない。もちろん日本のマスコミは、官庁発表や日本の学者の推定値は報道する。しかしこうした数字は政府の意図を忖度したものが多く、予測値より、希望値といった方がよい。したがって計画立案の資料としては、あまり役立たない。

 

・そういえば、コロナ情報だけではなく、世界の動きに関しても、国内情報を余り使うことはない。たとえば、ここ10年ほど、日本の新聞やテレビはあまり見ていない。というより見る必要がなくなっている。ニュースはフィナンシャル・タイムズ紙やウォールストリート・ジャーナル紙を読めば十分だ。また天気予報はウェブでチェックすればよい。娯楽映画はアマゾンファイアで楽しむことができる。

 

・なぜこれで済むかというと、世界の大勢がIT革新によって大きく変わり、日本がそれについて行けないからだ。いまや世界を動かしているのは、GAFAと呼ばれるIT大手である(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルなど)。日本では既得権益層の力が強く、IT革新の進行に対する抵抗が大きい。したがって世界の動きを見るには、国内情報源に頼る日本のマスコミは役立たない。

 

・この伝で言うと、今気になっているのは、日本の自動車産業の没落可能性だ。嘘だと言われるかもしれないが、すでにドイツの自動車に関しては、”iPhoneモーメント”として、この問題が危機感を持ってとらえられている。”iPhoneモーメント”とは、ケータイ市場がアップルのiPhoneの登場で一変したように、既存の自動車市場が、EV化(電気自動車)によって急速に空洞化することを意味する。この意味でEVの先駆者テスラの動きは、なかなか不気味だ。

 

・ところが日本ではテスラの動静はジャーナリストがなかなか取り上げない。これは日本のカーメーカーに忖度しているからだろう。そういえば、ジャーナリストの佐藤正明氏が、トヨタに批判的なことを述べたら干されかけたという話を聞いたことがある。

 

・個人的に見た場合、一つの解決策は、和僑(わきょう)を目指すことだ。和僑とは華僑(かきょう)をもじった言葉だが、日本政府や大企業に頼らずに、みずから海外に進出し、そこで才能を開花させることを意味する。アメリカ在住の中島聡氏は、その一例だろう。彼はIT専門家として、シリコンバレーで成功し、今はハワイに居住している。

 

・和僑(わきょう)への動きは始まり掛けている。この間筆者の出た都立高校の進学先を見ていたら、外国大学への進学者が10名弱居た。若者も現代日本の閉塞感に危機感を持ち始めているなと思った次第だ。

 

(参考)

・マシュー・O・ジャクソン、「ヒューマン・ネットワーク」、依田光江訳、早川書房、2020

  Matthew O.Jackson,"The Human Network",Atlantic Books,2019

・中島聡、「ニューエリート」、角川、2021

・佐藤正明、「あの強いトヨタはどこに消えた」、文藝春秋、2012年7月