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コロナショックで明らかになった日本統治機構の老朽化

 コロナショックで明らかになった日本統治機構の老朽化

   2021.05.08

・そろそろオリンピック本番だというのに、日本のワクチン接種率は諸外国に比べて大幅に低い。Our World in Dataによると、最新の国別ワクチン接種率は以下の通り(2021年5月5日現在、注意:この統計には中国は含まれていない)

 

  一位 イスラエル 65.6%(対人口比)。

  二位 英国    51.5%(以下同じ)

  三位 バーレーン 44.7%

  四位 アメリカ  44.4% 

  五位 チリ    43.4%

    六位  ハンガリー 43.0%

   以下飛ばすが、主要国では、

     ドイツ   30.4%

          フランス  24.6%

          インド   9.4%

 

 ・これに対して日本の接種率は、2.4%というお粗末さだ。この数字があまり目に入らないのは、日本の新聞などが、世界の接種率比較をするときに、(意図的に?)日本の数字を抜いているからだ。日本は、接種率でみると、先進国のアメリカや英国だけでなくチリやハンガリーにも大きく水をあけられている。どうも世界全体では10億人がすでにワクチンを受けたようだ。これはコロナウィルスが発見されてからわずか16か月のことで快挙といえる(Natureによる)。

 

・たしかにわずかな時間でこれだけの接種が進んだのは、奇跡的だ。ただし問題は接種機会の不平等性で、特に途上国における接種の遅れが問題とされている。日本は問題外だ。

 

・面白いのは、EUで、当初はワクチン接種が英米に比べて遅れていた。そこで欧州委員長はブルトン氏(Thierry Breton)を呼んで、この問題の解決にあたらせた。彼は多国籍企業のCEOやフランスの財務相を歴任した有能な”問題解決屋”(Mr.Fixit)だ。

 

・ブルトン氏は製薬会社幹部とのビデオ会議、メルケル独首相やマクロン仏大統領との電話会議に出席した。さらにイースター(日曜)にワクチン製造のフランス工場を視察した。こうして彼はEU域内12か国にある53工場の生産状況を把握した。これをもとに、彼のチームはワクチン生産に集中的に取り組み、生産増大を実現させた。

 

・たしか日本でもワクチン担当大臣が任命されたはずだ。しかし彼がEUのブルトン氏のように働いてきたとは思えない。それは日本のワクチン接種率の低さを見ても明らかだ。日本は、一方でオリンピックは開くといい、他方でワクチン接種は大幅に遅れている。この国が一体何を考えているかは、外から見るとよくわからないだろう。

 

・問題は、こうした緊急事態に、政治家や行政もしくは企業がどれだけうまく対応できたかどうかだ。この点、日本は残念ながら落第点ということになる。

 

・これは実は日本にとっては大問題だ。なぜかというと今回のコロナショックは日本にとって一種のストレステスト(銀行などが健全性をテストするために受ける緊急事態の財務状態のチェック)になるからだ。その結果は残念ながら、芳しくない。今回のコロナショックは、この点を世界に知らしめてしまった。

 

・これは下手をすると、小説家相場英雄の言う、日本”EXIT”の始まりかもしれない。衆目にさらされたこの国の統治機構の老朽化が、この国の経済的未来を暗くする。

 

(参考)

・Freda Krier,"'Unprecedented achievmnet':who receive the first billion COVID cavvinations?",Nature,29,April,2021

・Nick Kostov and Daniel Michaels,”EUワクチン救世主「ミスター解決屋」”、WSJ,2021.04.29

  "When the EU's Covid-19 Vaccine Drive Sumbled,It Turned to Mr.Fixit"