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IT革新とソフトの力

IT革新とソフトの力

 2020.02.07

・中島聡氏のブログを読んでいたら、マーク・アンデュルーセンの「ソフトウェアが世界を食い尽くす」という論文がお勧めだと書いてあったので、今回読んでみた。

 

・マーク・アンデュルーセンに関してはご存じの方も多いだろう。今われわれがインターネットに接続するときに使っているブラウザ(クロームやエッジ)の原型(ネットスケープ)を作った人物だ。これを作ったときには確か学生だった。その後ベンチャーキャピタリストに転じている。なおこの論文が書かれたのは今から10年前であることに留意されたい。以下論文内容を簡単に紹介する。

 

・フェイスブックやツイッターが急速に伸び始めている。これはバブルではないかという議論が多いがそれは間違っている。

 

・著者(マーク・アンデュルーセン)は、現在ベンチャーキャピタルのパートナーであり、フェイスブック、グルーポン、スカイプ、ツイッターなどに投資している。また個人的にもリンクトインに投資している。こうした企業が高成長、高利潤、永続可能なビジネスであることに確信を抱いているからだ。これは、マクロ的に言えば、本格的な技術革新が経済構造を大きく変えつつあることを意味する。

 

・10年以内に(たまたま2021年がそれにあたる)、こうしたシリコンバレー生まれの企業が既存産業を空洞化し新たなトレンドを作ることになるだろう。

 

・たとえば、書店でいえば、ボーダーズが凋落し、アマゾンが勃興した。ボーダーズはオンラインビジネスは本流にならないと考え、アマゾンに引き渡したのだ。今日アマゾンは、ソフトの力を使って、あらゆるものをオンラインで販売している。

 

・同様なことはネットフリックスとブロックバスターとの関係にも言える。ブロックバスターによるdvdの店舗貸しは、ネットフリックスのオンラインダウンロード化にやられてしまった。

 

・音楽でいえば、勝ち組はアップル、スポティファイ、パンドラなどだ。在来型のレコード会社はこうした企業にコンテンツを提供するだけの存在となった。映画でいえばピクサーが勝ち組だ。結局ディズニーはこの企業を買収せざるを得なかった。

 

・スカイプは、大電話企業に対抗して、無料電話を広げた(同社はマイクロソフトが買収)。

 

・またクルマなどの実物市場も、ソフトが優位になるだろう。それは自動運転の実現にはソフトの優位性が不可欠だからだ。

 

・スーパーのウォールマートや輸送業のフェデックスもソフト化に大きく舵を切っている。金融業にもこうした波が訪れるだろう。スクエアはその先駆けだ。

 

・健康分野や国防関連でもこうした流れが強まる。つまりあらゆる産業でソフトウェア革命が進行する。これが「ソフトウェアが世界を食い尽くす」ことの意味だ。シュンペーター流に言えば、”創造的破壊”だ。

 

・著者(マーク・アンデュルーセン)はこの流れが本物であることを確信し、それに資金を投じるつもりだ。

 

・以下、この論文を読んだ感想。

 

*10年前に書かれた論文とはとても思えない。現在でもほとんどがそのまま通用する。

 

*しかも重要なのは、論文の著者(マーク・アンデュルーセン)が自ら資金を投じてこのトレンドに賭けていること。つまり彼は評論家的立場でなく、自らリスクを取っている。いわば本人が急流に身を投じているわけで、それがこの論文の強みと迫力になっている。

 

*この論文でも書かれていたが、モノの世界(クルマなど)でも、ソフト化の動きは、自動運転を軸にして、本格化しつつある。中島聡氏のブログにも触れてあったが、クルマのソフト化はクルマの構造のみならず、産業構造そのものを一変させる。いわゆる現在のクルマ屋さんの強みであるパワートレインに代わって、クルマをコントロールするソフトがクルマの性能や価値を決める時代がすぐそこまで来ている。

 

*たとえばベンツがエヌビディアと組んで始めているのは、この試行だろう。テスラはすでにその先を行っている。日本では、トップメーカーをはじめとして、これに対応する動きは鈍い。

 

(参考)

・中島聡、「Life is Beautiful」2021年1月19日号

・Marc Andreessen,"Why software is eating the world",WSJ,Aug.20,2011

・Nvidia,"Mercedes-Benz,NVIDIA partner to build the World's most advanced software-defined Vehicles",June 23,2020