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コロナショック:今後の動向

コロナショック:今後の動向

 2020.11.28

・幸いなことに、コロナショックの行き先がだいぶ見えてきた。

 

・シンクタンクのマッキンゼーによると、アメリカの感染ピークは来年(2021年)の第3四半期から第4四半期にかけてのようだ。

 

・これまでコロナショックは先が見えないために、世界経済に大きな不安を与えてきた。仮にその被害規模が大きくても、先行きさえ見えれば、企業経営者は手を打ちやすくなる。これを受けてアメリカの株価は上昇した。

 

・こうした計算が可能になったのは、感染データが整ってきたこと、およびワクチン開発の成功が役立っている。

 

・ワクチンに関しては、ファイザー・ビオンテック(Pfizer,BioNTtech)とモデルナ(Moderna)の開発したものが9割を超える効果を発揮している。またアストラゼネカとオックスフォード大学のチームが開発したワクチンも7割の効果が得られたようだ。アストラゼネカワクチンの良いところは、コストが安い(3~4ドル/一回分)のと、貯蔵が普通の冷蔵庫で間に合うことのようだ。

 

・コロナショックの進展に関するアメリカの例が典型的だとすれば、日本のコロナショックのピークも来年後半ということになる。後一年は我慢する必要がありそうだ。

 

・日本の対応で、気になるのは、政策当局が先行きに関するシナリオを提示しないことだ。感染者が増えるにつれて、gotoをやめたり、もしくは続けたりする。いわゆる状況対応型だ。こうすれば、何か起こっても誰も責任を取る必要がなくなる。しかしこのやり方では早晩行き詰まることは目に見えている。

 

・また日本で従来取られてきた対策であるクラスターつぶし(cluster-busting)の有効性も薄れるつつある。この方式は感染者が少ないときには、コロナの蔓延を防ぐのに役立つ。しかし現時点のように、感染が急拡大しているときには、役にたたない。日本の当局者は、疫学モデルを用いた感染将来像を明らかにし、その場合にどのような対策をとるかを国民に示すべきだ。

 

・話は飛ぶが、今回のコロナショックで明らかになったことの一つにナウキャスト(Nowcast)の有効性がある。これは気象学の言葉だが、要するに数時間先の気象現象を予測することを意味する。つまり状況の変化に応じて何が起こるかを素早く示すのが、ナウキャストだ。経済の場合はこれに対応するものとしてGDPnowなどがあるが、あまり役立たない。

 

・当方が開発中のe予測は、まさにこの用途に適している。最近当方のEY_47Kシステムを用いて、47都道府県別にコロナショックのインパクトを試算した。ちょっと自慢になるが、当方が日本マクロに対するコロナショックのインパクトを試算したのは、約半年前だが、その結果は最近IMFが発表したそれとほぼ等しい(GDPの推移)。

                                                  2020年  2021年

 IMF(2020年10月、WEO、日本)  -5.3    2.3

  当方のe予測(2020年4月)      -5.3    2.0 

 

・当方の予測値は、HP上に公開しているから、興味ある方はそれを見てほしい。e予測の特色は、このアプリを用いれば、こうしたWhat if questionに関する様々な解を求めることができることだ。

 

(参考)

・McKinsey & Company,"When will the COVID-19 pandemic end/ An update",Nov.2020

・Jon Cohen,John Travis,"Another COVID-19 vaccine success? Candidate may prevent further coronavirus transmission,too",Science,Nov.23,2020

・William H.Press and Richard C. Levin,"Modeling,post COVID-19",Science,Nov.27,2020

・Japan Times,"Japan's coronavirus cluster-bustnig approach nears its limit",Nov.23.2020