カリフォルニア州の電力事情とバッテリーの活用
2020.09.06
・本年8月半ばにカリフォルニア州は、記録的な熱波に襲われ、部分停電を余儀なくされた。
・この停電は、熱波による電力需要拡大(エアコン利用の増加など)を賄うためのピーク発電施設(天然ガス発電)の故障、近隣州からの電力輸入ができなかった(近隣州も同様な熱波に襲われた)ことなどによる。
・こうした電力のピーク対策として、カリフォルニア州はバッテリー貯蔵施設の拡大を進めている。たとえば、発電インフラに投資するLSPower社は、最近同州サンディエゴ郡で世界最大のバッテリー貯蔵システムの運用を開始した。その規模は25万kwで、これまで世界最大だったオーストラリアのHornsdale Power Reserveのそれ(15万kw)を上回る。ちなみにオーストラリアのバッテリ貯蔵はテスラによるものである。
・バッテリーシステムは、ソーラー発電による余剰分を昼間貯蔵し、エアコン需要の高まる夕方に放電することでピーク対策に役立つ。ちなみに25万kwの規模はほぼ19万世帯の電力需要をカバーする。
・カリフォルニア州は、温暖化対策のためエネルギーシステムの脱炭素化を進めている。しかし風力やソーラーなどの再生可能エネルギーを本格導入するためには、これらの出力変動を緩和するための仕組みが必要だ。これにはバッテリー貯蔵が役立つし、コスト的にも引き合う。Wood Makenzie社のDan Finn-Foley氏は、バッテリー貯蔵システムのコストは過去10年で90%低下したと述べている。ちなみにこのWood Makenzieは、世界的に有名な化学物質、再生可能エネルギーなどに関するコンサルタント・グループである。
・カリフォルニア州の脱炭素化戦略は、2045年までに1,500万kwのバッテリー貯蔵システム構築を目指している。2030年までに1,000万kwが設置される見込み。
・この背景には、再生可能エネルギー発電の大幅なコスト低下がある。ローレンスバークレイ国立研究所によると、ソーラー発電や風力のコストは2010年以来65-85%低下したという。こうした実績を背景に、カリフォルニア州は2030年までに、再生可能エネルギーによる電力の脱炭素化を実現しようとしている。
・日本の場合、ようやく石炭火力発電の漸減を宣言したばかりだ(経済産業省、2020年7月3日、「二酸化炭素排出量が多い低効率な石炭火力発電所の休廃止を進めると宣言」)。日本の温暖化問題に対する姿勢は、いかにも遅く、世界の大勢から大きく遅れている。
(参考)
・Gregory Meyer,"California bets on batteries to ease blackoout worries",FT,20/08/26
・Amil Phadke etal,"Cost-effective decarbonization of California's power sector by 2030 with the aid of battery storage",Lawrence Bwrkeley National Laboratory,Working Paper 009,June,2019