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コロナショックの今後

コロナショックの今後

  2020.08.08

・日本のコロナウィルスの感染者は45,899人となり、東京の1日あたり感染者は462人と収まる様子がない(2020年8月8日現在)。

 

・そろそろこの問題に対して、長期的な展望を持つ必要があるだろう。その点で参考になるのが、科学ジャーナリスト・ミーガン・スデラリがNature誌に書いた展望論文だ。

 

・第一に彼女が指摘しているのは、専門家の一致した意見として、①コロナウィルスとは当分共存せざるをえない、②今後どうなるかは、免疫の有効期間がどの程度続くか、コロナの季節要因はどの程度あるのか、各国の政府の対応策如何による、という点だ。

 

・たとえば免疫の有効期間が40週(約280日)以下だと何回も感染の波が発生する、これが100週(700日)まで伸びれば、感染の波は1年ごとになるとされている。

 

・また感染爆発を防ぐためには、感染者の追跡が肝心で、8割の患者に関して迅速に感染ルートを発見できれば抑えることができるという。そのためにはトレース・アプリが必要になってこよう。ともかくワクチンができるまで、我々のできることは3密を避けることぐらいらしい。

 

・ではこうした直接感染防止策以外に、各国政府はどのような対応が可能なのだろうか。これを論じたのが、ハーバード大公衆衛生学部(Harvard T.H. Chan School of Public Health)のバーンスタイン等の論文だ。

 

・これを読むと、熱帯雨林など、これまで人々が密に接触を持たなかったところが、開発が進み、これによって野生動物と人との接触が高まり、これが最近のウィルス禍の主たる原因であるとしている。実際21世紀に入って、こうしたウィルス騒動はMERS(中東呼吸器症候群),SARS(重症急性呼吸器症候群),H1N1(インフルエンザ),コロナウィルスなどいくつも発生している。

 

・対策として、野生動物交易の監視、動物からの感染防止、熱帯雨林破壊の半減、中国における野生動物肉交易の廃止などを行うと、そのコストは220億ドル~312億ドルとなる。これによる温暖化防止への貢献は43億ドルとなるから(副次効果)、上のコストからこれを差し引くと、防疫に関しては、177~269億ドル程度の純コストとなる。

 

・他方でコロナウィルスによる被害は、GDP損失が5.6兆ドル、VSL(統計的生命価値、患者の死亡による経済的損失)が5.9兆ドル程度となる。これを上に挙げた対策コスト(177~269億ドル)と比べると、圧倒的に後者の値が小さい。つまり熱帯雨林保護や、野生動物の肉の交易の抑制が、本来的な意味でのウィルス対策になるし、その経済的効果は大きいことがわかる。これは重要な指摘だ。そろそろ日本もこうした観点から世界の防疫や温暖化対策に取り組んだら、どうだろうか。

 

(参考)

・Megan Scudellari,"The Pandemics Future",Nature,Vol.584,6 Aug.2020

・Aaron Bernstein etal,"Ecology and economics for pandemic prevention",Science,July 2020,Vol369,6502

・David Crow,"The next virus pandemic is not far away",FT,Aug.6,2020