テレワーキングに思うこと
2020.05.30
・コロナショックで、当方もテレワーキングをここ2か月ほど行ってきた。筆者は海沿いに住んでいるため、幸いなことに仕事と運動のバランスをうまく取ることができた。
・この間お世話になったのが、アマゾンファイアだ。これはアマゾン・プライムに付帯したビデオの見放題サービスで、一万円弱のアマゾン・スティックを買えば、wifi環境下ですぐ利用することができる。
・夜になると暇なので、アマゾンの映画見放題を楽しんだ。一回これを使うと、ツタヤさんやケーブルテレビの出番はほとんどなくなる。わざわざ店まで行ってdvdを借りる必要はないし、またケーブルテレビのお仕着せ番組の中から無理に見る番組を選ぶという必要もなくなるからだ。
・アマゾンのサービスは、膨大な数の映画がタダでみられるだけでなく、解説付きの案内画面が出てくるので、その中から好きな映画を選べばよい(これはユーザーのこれまでの映画視聴歴が反映される)。たまに有料(といっても数百円で48時間みることができる)もあるが、ほとんどは無料だ。しかもアマゾン・スティックはよくできていて、ほとんどの操作が数個のボタンで済む。これがケーブルテレビだと、複数のリモコンをそれぞれ操作するという手間がかかる(しかもそれぞれのリモコンのボタンの数は多い)。
・見た映画の中で印象に残ったのが、フランス映画の「奇跡の教室」だ。これは2014年の作品だから、割と新しい。話は、パリ郊外の落ちこぼれ高校で、一人の中年女性教師(アンヌ・ゲゲン)が、生徒たちにうまく課題を与えることにより、彼らに向学心と団結心が芽生え、結局うまく育っていくというものだ。
・第一に驚いたのが、生徒たちの人種的文化的多様さだ。白人もいれば(その中に少数民族もいる)、アフリカ系もおり、さらにアジア系の顔も見ることができる。またそのバックボーンである宗教などもキリスト教から、イスラム教その他まで多様だ。ただでさえ難しい年ごろのこうした子供を、この多元性を保ちながら、一つの方向に引っ張て行くのは大変な仕事であるのが理解できる。
・もう一つのポイントは、生徒たちに共通課題として与えたのが、第二次大戦中のナチスの強制収容所とそれに対するペタン政権の協力態度だ。かれらは、この問題を、図書館の資料や、実際に収容所から帰還した老人に話を聞くことにより、自分たちの問題としてまとめ上げ、それをもってコンクールに参加する。そのプロセスが映画のみどころだ。
・この映画を見て思ったのだが、日本の場合、近現代の歴史に関する教育はあまりきちんとなされていないことだ。日露戦争の勝利・第一次大戦への参加/対華21か条要求・大恐慌と金解禁・満州事変・日中戦争・太平洋戦争といった流れを、事実としてきちんと押さえておくことが、コロナ後の日本の針路を決めるためには重要だろう。
・その意味で勧められるのは、半藤氏の「昭和史」だ。この本は、1926年から1945年までの日本の歩んだ道をわかりやすく、かつ特定のイデオロギーにとらわれないで書いている。こうした本を高校の副読本にすればよいのではないだろうか。
・アマゾンの提供する映画は、アメリカにとどまらず世界各国のものが含まれている。たとえばトルコ版のトップガンや、ノルウェー映画(「ヒットラーに屈しなかった国王」)などさまざまだ。筆者がこれまで親しんできたのはハードボイルドか鬼平/剣客商売だったので、アマゾン映画はなかなか新鮮だった。
・これはささやかな体験だが、コロナショックが一挙にIT革新を進めるという言葉が実感できたのはよかった。これがテレワークの成果といえるかもしれない。
(参考)
・半藤一利、「昭和史」、平凡社、2009年