· 

コロナウィルス3題

コロナウィルス3題

 2020.03.07

・コロナウィルス問題が日本でも深刻化しつつある。これに関し、有用と思われる情報を整理しておく。

 

・対策に関して、一番明快で、わかりやすいのはフィナンシャルタイムズが米国CDC(米国疾病予防管理センター、Centers for Disease Control and Prevention)等にインタビューした記事だ。

 

・要約すると、

  *このウィルスはパンデミック(感染爆発)の可能性が高い。

  *高齢者もしくは症状の重い人以外は、感染しても自宅待機して欲しい。

  *食料を少なくとも3-4日分(理想的には2週間)保存しておくことが望ましい。

 

・なお日々の感染者の数は、ジョンズホプキンズ大学のCSSE(Center for Systems Science Engineering)のサイトで地域毎に見ることができる。2020年3月7日現在、感染者は世界で10万人を超え、死者3千人、回復者5万7千人などとなっている。

 

・なおブラックスワンのニコラス・タレブが、この状況に関するシステム専門家としての知見を披瀝している。彼によると、この感染は世界がグローバル化によって密接なつながりを持った結果であり、これはファットテイル現象としてとらえるべきであるという。したがって感染学者の従来のような正規分布的経験による防除法は、あまり有効ではない。今必要なのは、予防原理(起こる前にそれを防ぐ手立てを取っておく)であり、万一発生したときには、速やかに世界のコネクティビティを遮断することであるという。

 

・日本の対応は、他国に比べ、かなり遅くかつ適切さを欠いている。ニューヨークタイムズ紙は、この点を批判している(保護すべきは学童ではなく高齢者)。

 

・日本と対照的なのが、台湾だ。台湾は感染者45人(2020年3月7日)と、感染をうまく押さえ込んでいる。日本との違いは迅速で適切な対応だろう(”神対応”)。これについて、ノンフィクションライターの近藤弥生子氏は、台湾政府のディジタル担当政務委員(大臣に相当)オードリー・タン氏の存在が大きいという。同氏は現在38歳、子供の頃からプログラムに優れ、中学中退後IT企業を創設した。

 

・タン氏を見ていると、ジョブズと共にアップルを立ち上げたウォズニアックを思い出す。日本の政官界で、中学中退の38歳が大臣となって第一線で指揮を執る姿を想像してほしい。まず不可能だろう。日本の硬直性はまさにこうしたところに現れている。もはや世襲政治家と東大卒官僚が国を動かす時代ではない。これが今回のコロナウィルス騒動に関する最大の教訓ではないか。

 

(参考)

・Matthew Rocco and Hannah Kuchler,"US health official warns public  to operate for coronavirus outbreak",FT,2020/02/26

・Joseph Norman,Yaneer Bar-Yann,Nassim Nicholas Taleb,"Systemic Risk of Pandemic via Novel Pathogens-Coronavirus: a note",New England Complex Systems Institute,Jan.26,2020

・西岡千史、「新型コロナ”神対応”連発で支持率棒上げの台湾」,2020.02.09

・BenDooley,Makoto Richi and Makino Inoue,"In Graying Japan,Many are vulnerable but few are Being Tested",New York Times,Feb.29,2020