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カリフォルニア州の天然ガス規制のその後

カリフォルニア州の天然ガス規制のその後

  2020/02/09

・昨年9月、「カリフォルニア州バークレーでの住宅用天然ガスの禁止に関して

 」をブログに載せた(2019.09.14)。その後この問題に関して、いくつか進展があったので記しておく。

 

・まずその規制への反動だが、WSJの社説(2019年12月24日)によると、ガス器具の電気器具への買い換えに約7,200ドルかかり、さらに光熱費が年間約400ドル弱増えるという。またカリフォルニア州レストラン協会はバークレー市の天然ガス禁止条例に対する訴訟を起こし、その理由として調理に熱を加えるには天然ガスが必要と述べたそうだ。

 

・しかし他方で地球温暖化が進むことによる被害は身近に迫っている。カリフォルニア州をおそった森林火災も、温暖化により植物が乾燥し燃えやすくなっていることがその一因とみられている。すでに化石燃料使用の時代は終わりつつあるのかもしれない。

 

・こうした状況に対応してアメリカ・ガス協会は、「気候変化に関する声明」(Climate Change Position Statement)を発表した(2020年1月)。この声明で特徴的なのは、天然ガス利用システムからのメタン排出をさらに減らすとの条項だ(Natural Gas Utility Commitmentsの第1項)。メタンガスの温暖化効果は大きく、その漏出による温暖化効果問題をアメリカ・ガス協会が無視できなくなったということだろう。

 

・話は飛ぶが、最近のコロナウィルス騒動で、世界の天然ガス需要は減少した。中国のエネルギー企業大手のうち2社は最近、少なくとも14隻のLNG輸入に関して、不可抗力条項(force majeure)適用を宣言したそうだ。この条項は、通常は戦争や天災の発生に対して適用される。さらにこの動きに追随する企業が出てくることが見込まれている。アジアのLNG価格は、こうした状況を反映して、2.95ドル/MBTUまで低下した。

 

・これまで天然ガスは、温暖化低減の過渡状態を担うクリーンな燃料として位置づけられてきたが、温暖化が本格化しつつある現状においては、なかなか難しい時代を迎えそうだ。

 

・WSJ社説、「『ガス禁止』条例に皮肉なしっぺ返し」,WSJ,2019.12.24

   "A Green Rule Boomerang",by Editorial Board

・Gregory Meyer,"Cliamate change fears put US gas utilities on defensive"

  FT,2020/02/07

・American Gas Association,"Climate Change Position Statement",2020/01/27

・Dreak Brower and David Sheppard,"Coronavirus triggers turmoil i global gas market",FT,20120/02/08

・Wired,"オーストラリアの森林火災は、この地球の未来を’予言’している",2020/01/07