"LAMP"の時代
2019.10.19
・最近つくづく"LAMP"の時代を迎えたことを実感する。ランプ(LAMP)といっても、部屋の照明をランプに頼ることではない。この言葉はグーグルCEOだったエリック・シュミットの造語で、(L)inux, (A)pache, (M)ySQL, (P)HP, (P)ERL, (P)ythonの頭文字から取ったものだ。これらはいずれもオープンソフトである。ちなみにオープンソフトとは「ソースコードを一般に公開してソフトウェアの利用者による利用・修正・再頒布を許すことによるソフトのこと」(ウィキペディアによる)。
・具体的に言えば、リナックスはリーナスが作り上げたリナックス系のOS、アパッチはウェブサーバー用ソフト、PHP・Perl・パイソンはプログラミング言語である。エリック・シュミットはソフトの世界でこれらが主流になりつつあることを指摘した。筆者は、マイクロソフト社のVisual Studio上でソフトを開発しているが、部品としていくつものオープンソフトを活用しており、そのありがたさは身にしみている。
・オープンソフトの反対がクローズソフトである。通常大手のソフト会社がこの方式に従い、ソースコードは公開されないし、その修正もユーザには許されない。
・なぜオープンソフトが優位になったかに関しては、「伽藍とバザール」を書いたエリック・レイモンドの以下の文章がわかりやすい。彼によれば、クローズソフトの開発方式は以下のようなものだと言う(邦訳p28)。
「1.目標を決めて、みんなを同じ方向に向かせておく。
2.しっかり見張って、大事な細部が見落とされないように確かめる。
3.みんなのやる気を出させて、つまらないけれど必要な作業をやらせる。
4.メンバーの配置を組織化して、最大の生産性を上げるようにする。
5.プロジェクトの維持に必要なリソースを引っ張ってくる」
・しかしこのやり方では、プログラマーの創意が生かされない。それは、この方式に頼ると、プログラムを書く醍醐味が消えてしまうからだ。たとえて言えば、絵を描くときに、テーマはこれ、描き方はかくかくしかじか、制作期限は***までと言われたら、それだけで描く意欲が薄れてしまうのと同じだ。
・ソフト開発は、リナックスの創始者リーナスが言うように、本来とてつもなく面白く、人の創造力をかき立てるところがある。しかしクローズソフト方式に頼ると、このエッセンスが失われてしまうから、内容とスピードにおいてオープンソフトに太刀打ちできないことになる。
・このため最近では、ソフト開発大手がオープンソフトの積極活用に踏み切っている。たとえばIBMはオープンソースの管理会社レッドハットを買収した(2019年7月)。同社の最近の業績発表によると、企業としての成長をレッドハットに期待しているという。またウェブブラウザとしてわれわれがよく使うクロームはオープンソフトのクロミウム(Chromium)を利用している。マイクロソフトのエッジも来年からクロミウム・ベースになるという。
・さて日本の場合はどうだろうか。ソフト屋というのは、日本では正直言えばつまらない業種と思われがちだ。それはソフト開発方式が、クローズ型に頼っており、開発者の創意をかき立てないからだ。これではよいソフト屋も育たないし、また世界に通用するようなソフトも生まれない。
(参考)
・ Eric Raymond ,The Cathedral and the Bazar,伽藍とバザール、山形浩生訳,1998.08・Richard Waters,"IBMrevenues weghted down by business uncertainty in Europe",Oct.17,2019