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家庭用スマートパネルの”新機軸”

家庭用スマートパネルの”新機軸”

  2019.10.12

・日本では、固定価格買い取り制度(FIT)の買い取り価格が低下しつつあるため、ソーラー発電に対する一時の熱気は冷めつつある。

 

・しかも日本では、ソーラーパネル設置価格が海外に比べ割高で、このことが普及のネックとなっている。たとえば国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によるソーラー発電コスト(世界平均、2018年)は9円/kwh程度(8.5セント/kwh、1ドル105円として算定)であるのに対し、日本のそれは2018年で17円/kwh程度となっている(木村啓二氏の推定)。では家庭分野における再生可能エネルギーの普及は頭打ちになるのだろうか。

 

・最近になって、別な角度から、家庭用エネルギー・グリーン化への道が開けてきた。それはソーラーや風力など再生可能エネルギーの供給だけに目を向けるのではなく、需要サイドを総合化した形で、家庭のエネルギー・マネージメントを進めていこうとするアプローチだ。

 

・テスラでパワーウォールを開発していたアーチ・ラオ(Arch Rao)氏は独立してSpan.IOを立ち上げ、スパンパネル(span panel)を発表した(2019年9月)。スパンパネルは家庭用配電盤の代わりとなるもので、ソーラー発電や風力などのエネルギー供給と暖冷房や照明などの家庭内電力消費とを結びつけるハブとして設計されている。これは各家電機器の使用量を直接計測できるので、エネルギー供給だけでなく、需要側の情報もリアルタイムに取ることができる。このパネルはスマート化されており、これを使えば、家庭用エネルギー需給の最適化が可能になる。

 

・すでにハワイのソーラーパネル設置業者のリボルサン(RevolSun)社はこのパネルの導入を決めたと言われている。

 

・世界的なソーラー発電価格の低下、需要面まで含めた家庭用エネルギー利用の最適化を可能にするスマートスパンの登場、この二つが組み合わされると、家庭用エネルギーの将来に新たな展開がはじまりそうだ。

 

・話は飛ぶが、クルマではすでに自動運転とEV(電気自動車)がメインカレントになりつつある。家庭用エネルギーでも需給制御のスマート化を通じて、グリーン化が一挙に進む可能性がでてきた。さて日本の業界は、それを受け入れることができるかどうか。

 

(参考)

・Jeft St.John,"Tesla's Span.IO launches Smart Electrical Panel",Greentechmedia,Sept.19,2019

・Jonathan Shielber,"The man behind Tesla's Powerwll is now pitching an all-in-one power managemnet system for homes",Techcrunch,2019.09.19

・木村啓二、「日本の太陽光発電の発電コスト、現状と将来推計」、自然エネルギー財団、2019年7月

・IRENA(International Renewable Energy Agency),"Renewable Power Generation Costs in 2018",2019

・調達価格等算定委員会、「平成31年度以降の調達価格等に関する意見」、2019