· 

フィンテックのロビンフッド、快進撃

フィンテックのロビンフッド、快進撃。

 2019.10.05

・皆様の中にも株式取引を行っている人は多いだろう。もしも売買手数料が無料になり、預け金に3%の利子が付き、町のATMで現金を取り出せれば、言うことはないだろう。

 

・これはアメリカでは現実の話だ。ロビンフッドは2013年にカリフォルニア州で設立された証券会社だ。これはスタンフォード大学の数学科で同級だった二人の若者が作り上げた金融の新しいプラットフォームだ。この二人とは、バイジュウ・バット(Baiju Bhatt)とウラジミール・テネフ(Vladimir Tenev)である。バットはインド系2世で現在35歳、テネフは5歳の時にブルガリアから両親に連れられてアメリカに来た。現在33歳の若者だ。

 

・創業のきっかけが面白い。バットは2011年におこった「ウォール街を占拠せよ」(Occupy WallStreet Movement)に、新サービスの想を得たという。つまり既存の銀行や証券会社などが高い手数料で庶民を食い物にしているのではないかという懸念だ。

 

・これに対してロビンフッド(英国の伝説上の義賊の名前)は技術で対抗する。手数料なしを実現するため、スリムな企業構造を構築し、フィンテクをフルに利用して、新しいビジネスモデルを実現させた。ちなみに同社の収益源は、預かり金のアメリカ国債運用、発行しているマスターカードの手数料と言われている。

 

・このビジネスモデルはすでに、金融専門家の認めるところとなっている。ロビンフッドの企業価値は昨年末で56億ドルに達した。本年6月にはリビット・キャピタル(Ribbit Capital)やセコイヤ・キャピタル(Sequoia)から投資を受け入れ、さらにスライブ・キャピタル(Thrive Capial)なども参加し、その価値は76億ドルに達したと見られる。

 

・とどめを指したのは、オンライン証券会社大手のチャールズ・シュワブが、株式の売買手数料を無料にしたことだ(2019年10月)。これはロビンフッドのインパクトを既存の証券会社が無視できなくなったことを意味する。余談になるが、これによってオンライン証券会社の株価は大きく値を下げ、空売り筋が儲けたという。

 

・早く日本でもこのサービスが使えると便利だが、今のところアメリカ国内に限られている(米国内に住所を持ち、SSN:社会保障番号を保持すること)。ただし英国には進出するようだ。

 

・こうした動きをみていると、日本の金融業の時代遅れが目立つ。投資家のジム・ロジャーズが日本を見限るのも無理はない。世界は動き、日本は立ち止まる。さてどうなるだろうか。

 

(参考)

・Richard Henderson and Jwwnnifer Ablan ,"Short sellers gain from bets against brokerages",FT,Oct.3,2019

・Josh Constine,"Robinhood launches no-fee checking/savings with Mastercard and the most ATMs",techcrunch,2018.12.13

・Daniel Kuhun,"Robinhood raises $323 Million from DST,Sequioa and Ribbit Capital",Coindesk,Jul.2,2019