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カリフォルニア州バークレーでの住宅用天然ガスの禁止に関して

カリフォルニア州バークレーでの住宅用天然ガスの禁止に関して

 2019.09.14

・先日、住環境計画研究所の中上会長とお会いした。同氏とは30年来の友人である。そのとき彼が、「バークレーで天然ガスの住宅使用が禁止になったみたいだ。気になるので、来週アメリカに行くから確かめてみよう」と言っていた。以下はこの件に関する簡単な報告である。

 

・まずバークレー市に先立つ動きとして、2018年に、カリフォルニア州が、2045年までに発電を100%クリーンなエネルギー源(ソーラーや風力)にすることを決定したことがある。これは中間目標として、2030年までに発電におけるクリーンエネルギー源のシェアを60%にすることを求めている。

 

・こうした動きを、たかがカリフォルニア一州とあなどってはいけない。この州が決めた政策(例:レストラン等における禁煙、同性婚の承認、リサイクルの推進など)は、アメリカという国の枠を超えて世界の各都市に浸透しつつある。

 

・カリフォルニア州バークレー市はサンフランシスコ近傍にある人口10万の都市である。カリフォルニア大学バークレー校のあることで知られている。2019年7月同市は、新築の低層ビルに関して、天然ガス使用を禁止した。つまり給湯、暖房や調理で天然ガス使用のための施設を設置することが禁じられた。

 

・その背景にあるのは、最近の地球物理学者の発見だ。彼らはアメリカ東部の都市部(ワシントンからボストン)上空の大気サンプルを取り、メタン濃度がアメリカ環境保護局の基準を遙かに超えていることを見いだした。その主な原因は天然ガスの漏れ(パイプライン、天然ガス配送のインフラ)によるものだと言う。

 

・メタンは二酸化炭素に次ぐ温暖化ガスである。これまで天然ガスは、燃焼時の二酸化炭素排出量が問題とされ、その炭素排出係数は石炭や石油に比べ小さいため、化石燃料としては、比較的環境に良いエネルギー源と考えられてきた。しかし上の研究結果に従えば、天然ガスのメタン排出による温暖化効果を無視することはできない。バークレー市の天然ガス禁止にはこうした最近の議論に基づいている。

 

・この動きはバークレー市にとどまらない。カリフォルニア州のサンホセ市では、2030年までに全住宅の47%を電化するという目標を立てている。ちなみに上に述べたように、電化といっても、同州では電力源はすべて再生可能エネルギーであることに注意されたい。

 

・天然ガス禁止の動きは、電力と天然ガスの双方を販売している企業(例:PG&E)には、あまり影響はないが、天然ガスのみを販売している企業(例:SoCalGas)には非常に大きな影響が出そうだ。

 

・日本のエネルギー事業者にとっても、以上の動きは対岸の火事としてのんびり眺めているわけには、行かないだろう。

 

(参考)

・Susie Cagle,"Berkeley became first US city to ban natural gas. Here's what that may mean for th future",The Gurdian,July 24,2019

・Phil Mckenna,"Following Berkeley's Natural Gas Ban, More California Cities look to all-electric Future",Inside Cliamte News,July 23,2019

・Genevieve Plant,Erick Kort,Cody Floerchinger,Alexander Gvakharia,Issac Vimount,Colm Sweeney,"Large Fugitive Methane Emissions from Urban Centers Along U.E.East Coast",Geophysical Research Letters,Research Letter,10.1029/2019gl082635

・Oliver Milman,"California moves towards 100% carbon-free electricity after landmark vote",The Gurdian,Aug. 29,2018