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テスラ、自動車保険業に乗り出す

テスラ、自動車保険業に乗り出す。

  2019.09.08

・テスラはこの8月から保険業に乗り出すようだ。当初はカリフォルニア州に限られるが、テスラ自身が自動車保険の受け手になるという。これによってテスラのユーザは保険料を2割から3割節約できるという。面白いのは、テスラのアナウンスメントでは新車購入時に保険を掛けたい人は、VIN( Vehicle Identification Number、17桁の数字)を知らせるようにといっていることだ。これはクレジット・カードなどのPIN(Pesronal Identification Number)に相当するものだろう。普通のクルマにはこうした番号は付与されないから、これを見てもテスラがクルマというより、情報機器としてEV(電気自動車)を扱っていることがわかる。

 

・この保険は、実際には、保険業務の大手マーケル(Markel Corporation)傘下のステーツ・ナショナル(State National)が保険証券の発行者になるようだ。

 

・考えてみると、これはそれほど突飛なことではない。保険会社は、自動車保険を売るに際しては、自動車事故に関する多くのデータを持っていることが前提だ。大数法則を利用し、会社が損しない料率を決めて、自動車保険をクルマの乗り手に販売する。しかしテスラのEV(電気自動車)に関しては、テスラ自身がリアルタイムで走行データをすべて把握している。これに対して保険会社は、こうしたクルマの走行状況と事故発生に関して、全くといって良いほど情報を持たない。したがって既存の保険会社でテスラの保険を掛けると、(情報不足のため)プレミアムが高く設定され、割高になる。これが安くできれば、クルマのユーザにとってもメリットは大きい。

 

・面白いのは、テスラの保険業務には、保険の老舗のマーケルが提携相手として登場していることだ。またファイナンシャル・タイムズ紙によれば、アリアンツ(ドイツの有力金融グループ)も、同様な意図の元に、アリアンツ・オートモ-ティブを設立したようだ。これは既存の保険会社が、自動運転のような新技術への対応策を模索し始めているとみることができる。

 

・EV(電気自動車)/自動運転のような新技術が登場したとき、既存の保険会社はどう対応できるか。テスラがリアルタイムに走行データを保持していることを考えれば、データ面で保険会社に勝ち目はない。ここにもIT革新が既存の産業構造を空洞化する一つの可能性がある。すくなくともマーケルやアリアンツはこれに対応を始めている。さて日本の保険会社はどうだろうか。

 

(参考)

・Tesla,"Introducing Tesla Insurance",Aug.28,2019

・Robert Armstrong and Oliver Ralph,"Musk moves into insurance to cut premiums for Tesla owners"FT,2019.09.02