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石油メジャーと温暖化問題

石油メジャーと温暖化問題

 2019.08.18

・石油メジャーとはシェル、BP、エクソンなど、主として石油や天然ガスを供給する世界企業のことだ。こうした企業は、今長期的な経営判断をどのようにするかで、難しい決断に迫られている。

 

・第一のうねりは、地球温暖化問題だ。化石燃料がCO2ガス排出の主要源であることは間違いない。パリ協定では(2016年発効)、地球の平均気温の上昇を2度以内に抑えることが目標となっている。これの実現には、今世紀後半の化石燃料使用をほぼゼロにする必要がある。この場合、こうした化石燃料を供給している石油メジャーは、販売商品の需要がなくなるという危険に遭遇する。

 

・第二のうねりは、上とは逆だが、世界エネルギー需要の伸びだ。たとえばOxford Instute for Energy Studiesによれば、とくに途上国で、経済成長と人口増大により、エネルギー需要は今後も堅調な伸びを示すという。しかもこの伸びをすべて再生可能エネルギーでまかなうことは、彼らの言い分では、難しい。とすれば、石油メジャーにとっては、石油資源の確保を将来も続ける必要があり、そのための投資(石油探査など)の手を緩めるわけにはいかない。

 

・第三のうねりは、投資に対するリターンの維持だ。石油メジャーは、これまで10%以上のリターンを実現しており、これを今後も続けないと、株主から見放されるおそれがある。

 

・さらにやっかいなのは、中東情勢の不安定化だ。これは石油メジャーにとっては、原油高というプラス面はあるものの、タンカー拿捕などの事態にいたれば、単なる経済問題では済まなくなる。

 

・こうした国際政治情勢を横目で見ながら、上の三つのうねりにどう折り合いをつけていくかが、石油メジャーにとって生き残りを賭けた判断だ。

 

・メジャーの一つ、シェルの動きは、一つの可能性だ。同社は、電力への本格的参入を試みている。このためドイツの家庭用バッテリーメーカのゾネン(Sonnen)、電力供給業のファースト・ユーティリティ(First Utility、シェルエナジーと改称)、シンガポールのソーラー企業クリーンテック・ソーラー(Cleantech Solar)などの買収に踏み切っている。

 

・その背景には、化石燃料中心の現在の経営方針を続けることに関する金融リスクの増大がある。英国銀行とフランス中央銀行総裁らが本年7月に出した公開状(温暖化問題関連による金融危機に関する公開状)は、銀行家らしい間接的な言い回しを使いながら、こうしたリスクに関する警告となっている。

 

・日本には、残念ながら石油メジャーは存在しない。したがって石油メジャーが直面する問題には、やや鈍感になりがちだ。しかしある日突然、エネルギー需要家として、石油メジャーの方針転換に関するコスト負担の請求がくる可能性はある。

 

(参考)

・Bank of England,"Open Letter on climate-related finalcial risks",April 17,2019・The Oxford Instute for Energy Studies,"The Energy Transition and oil Companies' Hard Choices",July ,2019

・Anjli Raval,"Shell balances cobflicting shareholder demands",FT,July 8,2019