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健康食品の”真偽”

健康食品の”真偽”

 2019.06.15

 最近、テレビの健康番組や週刊誌で健康番組が花盛りだ。その影響力はたいしたもので、あるときは納豆がスーパーから消え、別の時はブロッコリーに皆が飛びつく。

 

 たしかに高齢化社会になって皆が健康に気を遣うようになったのは理解できる。健康に良い食品を取るに越したことはない。だがこうした番組で紹介される”健康食品”の中にはかなり怪しげなものも含まれているようだ。

 

 きちんとした科学的検証に基づいた学説に関しても。通説がひっくり返ることがある。たとえば、オリーブを使った『地中海式ダイエット』が健康に良いことは、権威ある専門誌にも紹介され、定説となっていたようだが、最近、調査方法に問題があったとかで、オリジナルな論文が撤回に追い込まれたようだ。

 

 そこで論文の正確性チェックに使われたのがカーライル法(Carlisle-Stouffer-Fisher Method)という検定法だ。この手法に関する参考文献を下に示す。余談になるが、引用元となっているPubmedとはアメリカの国立医学図書館の一部門である国立生物工学情報センター(NCBI)が提供している生命科学の書誌情報データベースで、無料で検索が可能になっている。いま世間の関心はビッグデータ一に集まっているが、実はIT時代のデータに関しては、こうしたデータ検索や政府機関の持つデータベース(例:世銀のWDI)が無料で公開されるようになったことが大事だ。こうしたフリー・データをどこまで活用できるかが、IT時代を勝ち抜けるかどうかの分かれ目になりつつある。

 

 アメリカで研究を続ける津川氏の著作によると、厳密にエビデンス化された”健康に良い食品”とは、魚、野菜と果実、精白されない炭水化物、オリーブオイル、ナッツ類などとなっている。このうちオリーブオイルに関して、今回クエッション・マークがつけられたらしい。筆者の考えでは、ここに示されたような食品を好みに応じて食べることが、われわれ素人にできる最善策のようだ。

 

 なお厳密なエビデンスに基づくと言うことは、ランダム化比較試験を適用したということだが、その条件をみたすことはなかなか難しい。この点に関しては、ジュディア・パールの「The Book of Why」の第4章がおすすめだ。最近ともすればランダム化比較試験によったという論文が多いが、なかには首をかしげるモノもある。この手法のなり立ち、成立条件などがパールの本ではわかりやすく示されている。

 

(参考)

Mescha EJ,Vetter TR,Pittet Jf,"An Appraisal of the Carlisle-Stouffer-Fisher Method for assessing Study Data Integrity and Fraud",Pubmed

ギガジン、「オリーブオイルを使った『地中海式ダイエット』の効果を示す重要な論文が撤回される」、2018年6月21日

津川友介、「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」、東洋経済、2018

Pearl J.,The Book of Why,Allen Lane,2018