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テスラの自動運転システム一歩先へ

テスラの自動運転システム一歩先へ

 2019.05.05

 ・前回のブログ(テスラのロボタクシー構想、2019.04.27)で自動運転方式には、Lidar+HD(高次元)地図方式とテスラ方式(クルマに多様なセンサーをつけ、AIのディープラーニングを利用して、その情報を解析することで自動運転を実現する)があり、両者のつばぜり合いが激しくなっていると述べた。

 

 ・それに関して、最近テスラ方式の優位に関するニュースが飛び交った。

 

 ・NVDIAは自動運転チップの開発メーカーとして有名だが、最近自社のブログで、テスラ方式が、自動運転に関する分水嶺を超えた(Tesla raises the Bar for Self-driving Carmakers)という記事を載せた。NVDIAの言い分だと、テスラ方式を実現するためには、リアルタイムに入ってくるデータを処理するために膨大な計算を必要とするが、テスラは自社開発のチップでこれを実現したという。

 

 ・具体的には、テスラのチップはCPU,GPU,ディープラーニング・アクセレレータを組み合わせたもので、その性能は144TOPS(兆回/秒)に達するという(公平を保てば、NVDIAもDRIVE AGX Pegasusを開発。160TOPS*2)。またディープラーニングを実現するには、それの規範になるデータが必要だが、テスラはすでに40万台に及ぶEVを世界に走らせており、それにはシャドー・モードで自動運転モードが実装されており、規範データはこれを利用できるという利点を有する。

 

 ・さらにFTのウォーターズ記者が指摘していることだが、クルマは年に8,200万台しか売れないが、スマフォは年に15億台(2018年)売れる。つまりチップの大量生産が進むと、そのコスト低下は、クルマ屋が考えている以上に速いということだ。とすれば、マスク流のチップが自動運転以外に様々な用途(例:屋内のエネルギー消費センサー)に使えれば、そのコスト低下と性能向上は、他の自動車メーカーが追いつくのは困難になる。

 

 ・HD(高次元)地図に頼る方法は、地図と現地に違いがあったとき、問題が生じる。他方でAI方式は、とくに参照する規範がないときには、うまくいかないことがある。Lidar方式が勝つか、テスラが勝つか、いずれにせよ、数年以内に決着がつくだろう。重要なのは、①チップの専門メーカーでないテスラが自前のチップを開発し、それがチップメーカーをも評価させたほどの性能を持ったこと、②テスラが自社のクルマの実車走行データを大量に保持することでAIの利点を駆使できる唯一の自動車メーカーであるということだ。

 

(参考)

・Rob Csongor,"Tesla raises the Bar for Self-driving Carmakers",NVDIA Blog,Apr.23,2019

・Richard Waters,"Why Tesla is taking a different appproach to self-driving cars",FT,May 5,2019