テスラのロボタクシー構想
2019.04.27
・相変わらずテスラをめぐる話題が尽きない。テスラの社長イーロン・マスクは投資家たちに、「来年半ばに、百万台以上のテスラ・カーが自動運転機能を装備する」と述べた。たしかにテスラは自前のAIチップを開発し、それは既存のNVDIAのチップの性能をはるかに上回るという。さらに同社は次世代チップも開発中だそうだ。
・ロボタクシー構想は、自動運転の発展形の一つだが、アイデアとしてはなかなか面白い。前提はテスラ・カーが自動運転でき、かつクルマとネットがリアルタイムに接続されていることだ。
・テスラのオーナーは、車が空いているときに、自分のクルマを(ドライバーなしで)貸し出すことができる。利用者はスマフォのアプリで、この車を呼びよせ、(ドライバーなしに)目的地に到達する。そのコストをマスクは、18セント/マイルと試算し、これはアメリカの車保有のコスト(62セント/マイル)を下回り、現在のライドシェアのコスト(2ドル~3ドル/マイル)をはるかに下回るという。
・たしかに自動運転技術の発達+自家用車の低稼働率+アプリによるイージーアクセス化を組み合わせれば、こうした交通サービスが生まれることは間違いない。これはウーバーなどが自動運転の実現にしゃかりきになる背景でもある。
・話が飛ぶが、テスラをめぐって面白いのは、ツイッター合戦だ。マスクは新たな構想をツイッターで公表し、それが割と早く実現する。このサイクルは、既存の製造業には考えられないことだ。マスクのツイッターに、最近では天敵が現れ($TSLAQ:$TSLAはテスラのティッカーシンボル[株式市場の銘柄指標]であり、それにQをつけると、株式用語では破産を意味するが、$TSLAQはそれをもじったもの)、そこではテスラの生産計画などを、ドローンなどで監視し、テスラに不利な情報をながし、これに対しマスクが反論するというプロセスが生じている。
・通常企業の新車発売計画などは、広報部門がマスコミに手を回し、記者会見で明らかになるというのが従来のやり方だ。マスク流のツイッターは、その伝達スピードとフィードバックの速さで、次代の企業の意思決定の在り方を示唆している。そこでの議論を通じて、企業戦略を柔軟に変えていくというのがIT時代の企業スタイルだ。
・自動運転に戻れば、注目しているのが、Lidarとマスク流自動運転システムのどちらが勝つかだ。マスクはLidarシステムを”できそこない”(lame)と呼んでいる。グーグルのウェイモは3次元地図+Lidar(レーザーパルスで周辺を探査)を用いて、自動運転タクシーの実現を図ろうとしている。これに対してテスラは8台のカメラ+12基のセンサー+レーダーで自動運転を可能にしようとしている。さてどちらが優位に立つだろうか。筆者の見立てでは、両者の長所をとったシステムが、将来の自動運転システムになると思う。いずれにせよ、数年以内には、勝負のめどがつくだろう。
最近トヨタは自動運転でNVDIAとの関係を強めたようだ。それで自動運転の最先端を行くことができるのだろうか。
(参考)
・Gigazine,「『2020年に完全自動運転車100万台によるロボットタクシー事業を展開する』イーロン・マスクCEOが豪語」、2018.04.23
・John Gapper,"Tesla's road to autonomy is full of danger",FT,Apr.25,2019
・Jamie Powell,"The Tesla Twitter war,charted",Alphaville,Apr.24,2019
・Alan Boyle,"Tesla CEO Elon Musk unveils his Robotaxi concept for a self-driving rideshare fleet",Geekwire,Apr.22,2019