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プラットフォーム企業のチップ内生化の動き

プラットフォーム企業のチップ内生化の動き

  2018.12.16

 プラットフォーム企業とは、アマゾン、グーグル、アップルなど21世紀の生活基盤を支える企業のことだ。テスラも運輸業で、もうすぐその仲間入りをするだろう。20世紀でいうなら、電力企業や電話企業がそれに当たる。

 

 こうしたプラットフォーム企業で、チップを内生化する動きが目立っている。たとえばアマゾンの利益の源泉はAWSというクラウド事業だが、同社はサーバー用に使うチップGravitonを自社開発した。これを使うと大幅な省エネを達成できるという。同社はAI用のチップ(Inferentia)も開発している。実際アマゾンは、2015年にチップメーカーAnnapurna Labsを3.5億ドルで買収しており、本気でチップ内生化に取り組んでいることがわかる。

 

 同様な動きはグーグルやアップルにもあり、グーグルは3世代にわたるAIチップの開発を経験済みで(TPU)、いよいよCPU開発に乗り出すという。アップルもモバイル製品用の自社製チップ「A」シリーズを開発した。

 

 テスラは、自動運転の効率化を図るために、"super kick-ass"というチップを開発している。それまで同社はNVDIAのチップを使っていたが、自社製チップを使うことで、自動運転の性能は10倍になると言う。その理由は、NVDIAなどのGPUがエミュレーションモードで動くため、データをCPUからGPUに渡すときに余計な時間を要しているからだ。

 

 こうした動きは,チップメーカーであるインテルやNVDIAに大きな影響を及ぼし、NVDIAの株価は150ドルを割る水準となっている。

 

 それにつけても、日本の動きは鈍い。日本の自動車メーカーはモービルアイやNVDIAのチップを使って運転の自動化を試みているが、これではテスラのようにチップを内生化するメーカーに、性能面で太刀打ちできないだろう。テスラの強みは20万台程度に達したテスラユーザの走行記録をすべて持っていることであり、これがチップの性能向上に役立っている。ポルシェが来年発表するEV(タイカン)の100キロ/時までの加速時間(3.5秒)がテスラSと同水準に過ぎないのをみても、先行者の有利は明らかだ。

 

 東京でも普通にテスラの姿を見かけるようになった。周回遅れの日本の自動車メーカーはどのように対応するのだろうか。

 

(参考)

・ギガジン、「アマゾンが開発する独自CPUはインテルチップへ暗い影を投げかけている」、2018.12.11

・Mets C.,"Amazon's Homegrown Chips Threaten Silicon Valley Giant Intel",Newyork Times,Dec.10,2018

・Jean Baptiste Su,"Why Tesla Dropped Nvdia's AI Platform for Self-driving Cars and build its own",Forbes, Aug.15,2018

・Economist,"The semiconductor industry and the power of globalisation",Dec.01,2018