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テスラの将来とiPhone・モーメント

テスラの将来とiPhone・モーメント

 2018.10.27

 テスラに関しては、このところ毀誉褒貶が多い。しかしその技術自体は確実に進歩しているようだ。最近の報道によると、テスラのオートパイロット用のチップは新しいものに交換され、ユーザはこのオプション(Enhanced Autopilot)を5,000ドルで購入できるようになったそうだ(前のバージョンは3,000ドル)。

 

 新バージョンはカメラを4台装着することで正確性と冗長性を増し、12個の超音波センサーをつけることで視野を360度確保した。それを処理するプロセッサーの能力は前バージョンに比べ40倍強力になったという。

 

 このように多数のセンサーをつけた場合、それらから生じるデータを総合して有用な情報に集約する技術をセンサーフージョン(sensor fusion)と呼ぶが、テスラが自前のチップを開発したと言うことは、この技術を我が物にしたことを意味するようだ。

 

 ところでテスラがSEC(米国証券取引委員会)から提訴されて、一時株価が下落したとき(200ドル台)、あるアナリスト(Tasha Keeney)がテスラは株価4000ドルの価値があるといって、世間の注目を浴びたが、これはまんざら冗談話ではない。

 

 シリコンバレーの宣教師の一人、マリオ・ハーガー(Mario Herger)が昨年ツイッターに書いた「いかにして伝統的な自動車産業が崩壊していくか」が再び注目を浴びている。彼はクルマにもケータイで起きた「iPhone・モーメント」が近い将来必ず起こるという。これはiPhoneが単なるMP3の改良版でもなく、ケータイ・カメラの改善でもなく、タッチスクリーンでもなく、それらを集約して製品化した実在(converged technology)であり、それによって一挙にスマフォの世界を変えた現象のことを指す。

 

 テスラはまさにクルマにおけるiPhoneだというのがマスクの主張だ。最初に示したようにテスラの進歩は指数的であり、これに対して従来型のクルマの技術進歩は線形的だ。この差が、自動車業界の命運を左右する日が近いのかもしれない。

 

 マリオ・ハーガーによると、2025年頃には、フォードかGMのどちらか、そしてドイツのカーメーカー3社(ダイムラー、BMW、VW)の2社は消滅するか、もしくは独立性を失うという。ここでは日本メーカーは名指しされてはいないが、それほど異なる姿は描きにくいだろう。

 

(参考)

・Jamie Powell,"Missing:Tesla's full self-driving option",FTAlphaville,Oct.20

,2018

・  " ,"Tesla's full self driving:compare and contrast",FTAlphaville,Oct.16

,2018

・Madhu S.Nair,G.Rju,"Additive noise removal using a novel fussy-based filter",Computer and Electrical Engineering,37,(2001) 644-655

・WSJ、「テスラファン、株式非公開でもマスク氏『一筋』」、2018.08.13

・Mario Herger,"How the collapse of the traditional auto industry will unfold",

 Twitter,2017.04.21

・Patrick Mcgee,"Can Germany survive the 'iPhone moment' for cars?",FT,2018.10.24