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ウーバー(Uber)の自動運転車の事故について

ウーバー(Uber)の自動運転車の事故について

 2018.03.24

 ウーバーの自動運転車が、アリゾナ州で歩行者をはね、死亡させた事件は衝撃的だった。まず亡くなられた方のご冥福をお祈りする。

 

 この事故に対する自動運転車開発メーカーの対応は様々だ。トヨタは当面公道での自動運転車の走行テスト中止した。これに対し、GMクルーズとフォード、Drive.ai等はテスト続行を決めた。両者の差は、自動運転車の開発によって、人的原因による事故(事故の9割を占めているといわれる)を減らす可能性をどう見るかによる。自動運転の実現に時間がかかるとみれば、当面は様子見をすることになる。他方で、実用化が近いとみれば、テストを続行するということになる。

 

 この事故の映像が現地の警察によって公開されたが、これを見ても、正直言って事故の原因はよくわからない。センサーが歩行者を認識できなかったのか、それともセンサーは認識したが、それをうまくクルマの運転状態の変更につなげなかったのか、それとも別な理由があるのか、はっきりしない。いずれにせよ、データは豊富に収集されているので、そのうちに原因と対策ははっきりするだろう。

 

 ところで、ウーバーの自動運転車にはLiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)と呼ばれるレ-ザーによる360度検出装置がつけられている。この装置はグーグルのwaymoにも用いられている。Waymoはこの装置を独自改良し、すでに自動運転の走行距離が500万マイルに達している(なおwaymoとウーバーの自動運転技術に関する訴訟はこの2月に和解に持ち込まれた)。

 

 これに対し、テスラやComma.aiはLiDARに頼らず、レーダーだけでなくカメラを用いているようだ(Kokalitcheva論文参照)。これはAI技術の発達によってカメラの画像解析技術が進み、画像から対象(人間、クルマ、標識など)を判別できるようになったからだという。

 

 もちろんテスラの場合も死亡事故を起こしている(2016年5月)が、これはNTSB(National Transportation Safety Board)による調査で、原因はテスラにあったのではないことが明らかにされている。つまりドライバーが、クルマの警告を無視して、オートパイロットモードで必要な、”ハンドルに手を添える”操作をしていなかったことによって生じたといわれる。ちなみにテスラはこの事故の後にソフトを改良し安全警告に反応しない場合、オートパイロット機能が使えないようにしたそうだ。

 

  いずれにせよ、自動運転のシステムには、いろいろなやり方があると言うことだ。

 

 今回のウーバーの事故は、公的調査によってその原因がはっきりするだろうが、それが自動運転車の健全な発達に寄与することが望まれる。それが痛ましい犠牲者に対する供養にもなるだろう。

 

(参考)

・Marshall A.,"UBerの自律走行車、衝撃的な『死亡事故の瞬間』の映像から見えてきたこと",Wired,2018.03.23"

・Bradshaw T.,"Police reliese video of Uber fatal collision",FT,3/23/2018

・Bradshaw T.and Waldmeir,"Toyota halts testing of autonomous vehicles on US public roads"FT,3/21/2018

・NTSB,Preliminary Report, Highway HWY16FH018,7/26/2016

・Kokalitcheva K.,"The most important technology for self-driving cars",AXIOS,May 16,2017