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無人運転車、空を飛ぶ

無人運転車、空を飛ぶ

 2018.03.18

 フィナンシャル・タイムズ紙を読んでいたら、無人飛行機の面白い記事にぶつかった。

 

 スラン(Thrun S.)といえば、自動運転車の第一人者で、スタンフォード大学チームを率いてDARPA(アメリカ国防高等研究計画局)の始めた2度目のグランドチャレンジで優勝した。彼はその後グーグルに加わり、そこで自動運転車を開発しそれが現在のwaymoとなった。

 

 最近彼の噂を聞かないと思っていたら、かれはグーグルのページ(Page L.)と共に、キティフォーク(Kitty Hawk)というスタートアップで、空飛ぶ無人運転車を開発していたのだ。これはコラ号(Cora)と呼ばれ、電池によるモーター駆動の12個のローターで浮かび上がる仕組みとなっている。

 

 その動きは動画を見た方がわかりやすい(https://www.youtube.com/watch?v=LeFxjRMv5U8)。

 

 この飛行機は、自動運転で、高度数百メートルを飛行し、2人を乗せて最高速180キロ/時弱で、100キロを飛ぶという。

 

 なるほどと思ったのは、電池駆動のため、小さなモーターを沢山つけることができるという仕組みだ。コラ号はいわゆる垂直離着陸機(VTOL)で、飛ぶのに滑走路がいらない。

 

 従来の垂直離着陸機(VTOL)はジェットエンジンを用いていたため、離陸に際してエンジンを垂直に向けて揚力を出し、離陸後はこのエンジンを前に進む推力に使うために水平に向けていた。そうすると離陸と水平飛行との間の過渡期を処理するのが難しく、かつエンジンを垂直から水平に向けるための余計な仕組みが必要だった。

 

 ところがモーター駆動になると、小さな上に向いたプロペラを沢山つけて、必要に応じて揚力を発生し、ある程度の高さに上がったら、あとは進行方向の大きなプロペラで水平方向のスピードをつけていけば良い。つまり従来の垂直離着陸機(VTOL)の問題点を、コラ号は電池+モーターで解決したことになる。

 

 この記事でもう一つ面白かったのは、ニュージーランドがこの開発を積極的に応援していることだ。あまり知られていないが、ニュージーランドはスタートアップの宝庫だ。たとえば、ロケットラブ(Rocket Lab)社が宇宙衛星打ち上げシステムを開発中である。このロケットはfrp(炭素繊維強化プラスティック)製で、そのエンジンは、燃焼方式でなく、電池駆動のポンプを使用するという。

 

 今回のスラン(Thrun S.)などが試運転に成功した無人走行タクシーの分野には、他のIT企業も参入し始めている。エアバスの子会社であるA3は電気飛行機のテスト飛行に成功したようだし(Vahana)、ウーバーはエンブラル社等と組んで2020年までに初飛行を計画している。

 

 ここでも日本の影は薄い。三菱重工がMRJなどで手間取っている間に、世界の飛行機市場は大きく変わろうとしている。

 

(参考)

・Bradshaw T.,Smyth J.,"Google founder's flying taxis secretly tested in New Zealand",FT. March 14,2018