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バブルの終わり?

バブルの終わり?

   2018.01.27

 いよいよアメリカの連銀もヨーロッパの中央銀行ECBもそろそろ引き締めに向かい始め、大幅な金融緩和の時期は終わろうとしている。おそらくこのことは株式市場やその他の資産市場に調整をもたらすことになるだろう。

 

 話を2008年の金融危機に戻すが、これを予測したエコノミストはほぼ皆無だったと言われている。この”予測の失敗”は、1987年に英国気象庁が、スパコンを使いながら暴風を予測できなかった事態とよく比較される。この気象予測の失敗は、BBCの気象担当者の名前をもじってミカエル・フィッシュ現象と呼ばれている。興味ある方は、このときの天気予報がユーチューブに載っているでご覧いただきたい(BBC weather blooper by Michael Fish storm of 1987)。

 

 しかし2008年の金融危機を金融当局が事前に予測できなかったという説明は必ずしも正しくない。少なくともアメリカの連邦準備銀行は、前年にこの問題の危なさを肌身に感じていたようだ。たとえば2007年に当時ニューヨーク連銀総裁だったガートナーは、金融システムに固有なシステミック・リスクに関するシンポジウムを開催し、総裁本人も複雑系との対比でみた金融システム固有の不安定性に関するセッションの議長を務めている。

 もう一つ例をあげよう。2007年のFRBKansas Cityのシンポジウムのメインテーマは住宅金融と金融政策であり、そこでは当時連銀理事だったミシュキンが、サブプライム崩壊時のシミュレーションを発表している。

 

 こうしてみると、2008年の金融危機は、当時の金融政策担当者には、何となく肌身で感じられ、それに対する論理的、もしくはモデル的検討はある程度進められていたことになる。

 

 にもかかわらず、金融危機は発生し、世界経済に多大な影響を与えただけでなく、マクロ経済学のあり方そのものまで問われるような事態となった(前回のブログ参照)。

 

 この状況は、最近の言葉で言えば、グレイ・リノ(灰色のサイ)現象といえるかもしれない。つまりまずい状況の到来がわかっているにもかかわらず、それに対する適切な対策が取られなかったということになる。

 

 この点に関しては、次回のブログでもう一度取り上げたい。

 

(参考)

・「踊る『株バブル』の終わりの始まり」FACTA,2018年2月号

・FRB of NewYork and National Academy of Sciences,"New Directions for understanding systemic Risk",2007

・Mishkin F.S.,"Housing and the Monetary Transmission Mechanism", A Sympsium by FRB of Kansas City,"Housing,Housing Finace,Monetary Policy",Sept.,2007

・Michel W., Gray Rhino, St.Martin's Press,2016