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電力供給--オフグリッドの可能性

電力供給--オフグリッドの可能性

  2017.11.11

 ・日本では風力やソーラーなど、再生可能エネルギーの普及は今一だ。その理由は2つある。第一は、固定価格買い取り制度(Feed-in Tariff)を採用しているため、再生可能エネの普及が進むほど、電力会社は顧客にその負担を求め、すでに数百円/月にも達しているからだ。これ以上再生可能エネを増やすと、この分担金が、今の制度下では増えることになる。第二の問題は、送配電網を電力会社が抑えているため、再生可能エネを遠隔地で発電しても、それの供給可能性は電力会社に握られており、送配電網に余裕がなければ、発電された電気は需要家に届かないことになる。

 

 ・しかし世界の動きは、これとは別の方向を行っている。10月17日付きのWSJの記事、「電気の未来、家がバッテリーで稼働する日」は興味深かった。ご承知のように、家庭の電力需要は朝と夜にピークを持ち、逆にソーラー発電は日中の天気の良い時間にピークを持つ。日本の現システムでは、余った電力は電力会社に逆潮流という形で、買い取ってもらう仕組みになっている。わざわざ家庭という末端から、送配電網を逆に流し電力会社に買ってもらうことになる。

 

・しかし各家庭にバッテリーを装着したらどうなるだろう。ソーラーのピーク発電はバッテリーに蓄電され、朝晩の需要の高まるときには、バッテリーを放電すれば済むことになる。わざわざ余剰電力を送配電網を逆に流す必要はない。

 

・こうした意見に対し、「バッテリーパックは高いからね」という反論が出るかもしれない。確かに日本メーカーのそれはかなり高い、蓄電容量4KWHから7KWHで二百万円以上する。しかしテスラのパワーウォール2は、容量13.5KWHで61万7千円となっている。KWHあたり5万円程度で、日本のそれ(30万円から70万円/KWH)を大幅に下回る。すでに日本で予約を受け付けているので、ご存じの方も多いだろう。こうなれば家庭用電力をオフグリッドで運用する可能性がでてくる。またこれは固定価格買い取り制度とも無縁なので、他の電力ユーザに、余計な負担をかけないで済む。こうしたことを見るといよいよソーラー発電とバッテリーの組み合わせが将来の本命となり始めていることが、感じられる。ちなみにドイツではSonnenというバッテリー・メーカーがこの道をひた進んでいる。社長のオスターマンは、会社設立の趣旨を、「われわれの目標は誰でもがエネルギー需要を分散型かつクリーンなエネルギー源でまかなえるようにすることだ」と述べている。同様な会社はZen Energy,Lyson Solar and Carnegie Clean Energyなどがある。

 

・テスラはさらに、電力会社にも魅力的なオプションを提供している。同社がソーラーシティを吸収したのは、2016年11月だが、すでに世界の2カ所で電力会社のピーク需要を化石燃料によるピーク発電ではなく、バッテリーでまかなうシステムを構築している。第一はSCE(サザンカル、アメリカカリフォルニア州,Mira Loma substation)の80MWH(2万KW)のシステムで、これはSCE所有の天然ガス田のガス漏れ事故への対応として始まり、2500世帯に供給可能だといわれ、2017年1月に稼働開始した。

 

・さらに最近では南オーストラリアで129MWH(10万KW)のバッテリーシステムを受注した。これは夏期のピーク需要に対応するためで、バッテリーの導入により、発電システムの安定性がコスト安で達成されるという。しかも驚きなのは工事期間で、100日で完工するという。これによる対象世帯は3万戸である。

 

・日本も固定価格買い取り制度にこだわり、逆潮流システムを当然のこととし、ピーク需要は天然ガス発電や揚水発電に頼るというシステムはそろそろ考え直した方が良いのではないだろうか。

 

(参考)

Mims C.,"Your Next Home Could Run on Batteries",WSJ,2017年10月17日

「電気の未来、家がバッテリーで稼働する日」

Sanderson H.,"Tesla to build giant battery to provide power to 30,000 homes",FT,July,8,2017

Electrek,"Tesla quetly brings online its massive-biggest in the world -80MWH

Powerpack station with Southern California Edison",Jan.23,2017