EV化のコモディティ化と中国の行き方

EV化のコモディティ化と中国の行き方

  2017.10.21

 最近NHKの「クローズアップ現代」でEVを取り上げていた。画像としては面白かったが、問題のポイントをうまく突いているとはとても思えなかった。

 

 こうした番組は、おそらくディレクタが役所、日本の自動車メーカーやシンクタンク、審議会の先生などにインタビューして内容を決め、あとは海外支局を使った画像を適当にはめ込んで速成に作り上げたものだろう。しかし、こうした新技術の本質に切り込むためには、一種のビジョナリー的な信念とそれに基づくシナリオ・ライティングが必要なのだ。この番組にはそれが欠けている。

 

 かって本田宗一郎が、ロータリー・エンジンを見て、「これはだめだ」と言い切ったことがあるそうだ。その理由は簡単で、燃焼室の表面積が大きすぎて、熱効率が高められないからだ。実際このエンジンは燃費向上に苦労したと聞いている。現代で言えば、イーロン・マスクの「燃料電池はフールセル」という言い回しにも、同様な”見識”が見て取れる。

 

 日本のことはさておいて、最近の自動運転とEVを巡る世界の話題としては、第一に中国がEVに大きくハンドルを切ったことがあげられる。これは途上国理論で言う、”蛙跳び”(leap frog)の直接適用であり、クルマの技術構造が大幅に変わるとき、新モデルにいち早く参入することにより、世界市場でリーダーシップを勝ち取ろうというものだ。

 

 しかし忘れてはならないのは、中国にはもっと緊急の課題があることだ。それはpm2.5に見られるような深刻な大気汚染である。食品などは、値段を出せば清浄なものが入手できるが、空気はそうはいかない。室内で空気清浄機を使ったとしても、外に出れば外気に触れざるを得ない。こうした大気汚染が,中国をEVに大きく踏み切らせたきっかけになったのではないか。参考に示したランセットの論文は、pm2.5の健康被害を見事に浮き彫りにしている。これは医学界の専門誌だが、EVの動向を考える上でも、目を通す価値がある。

 

 中国は最近は地球温暖化問題に対しても協力的になったが、それは世界の環境問題を考えると言うより、国内の深刻な大気汚染(石炭火力や石炭暖房などによる)の克服が緊急の課題になりつつあるように思える。

 

 EVと自動運転を巡るもう一つの話題は、エヌブイディアが最近自動運転のレベル5のソフトを一つに詰め込んだチップを発表したことだ。このチップがあればハンドルもブレーキもアクセルペダルも基本的に不要になるそうだ。

 

 スマフォと同じで自動車もいよいよチップを抑えた者が勝ちという時代に入りはじめた。ちなみにスマフォの場合は、チップはクアルコムが握っており、クアルコムとアップルとの大げんかもこの点に起因する。

 

 例によって、EVでも自動運転でも日本のメーカーの影は薄い。日本の自動車工業がこれで生きていけるかを気にかけるのは、年寄りの思いすごしだろうか。

 

(参考)

Charles Clover,"Electric cars: China's highly charged power play",FT, 

Oct.12,2017

 

Wilkinson et al,Public health benefits of strategies to reduce green-gas emissions:household energy, Lancet,Vol.374,Dec.5,2009

 

Richard Waters,"First chips for full control of driveless cars to hit the streets",FT,Oct.11,2017

 

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