e予測とAI

e予測とAI

  2017.07.23

・7月19日付けのウォール・ストリートジャーナル紙の”AIがウォール街を乗っ取れない理由”はなかなか面白かった。

 

・今はやりのAI(機械学習により、大量データから有意義なパターンを読み出す)を金融取引のメインツールとして使うときの問題点を整理しているからだ。

 

・一番大きな問題は、将来は過去の延長上にあるのか、ということだ。金融市場には豊富なデータが存在するが、問題は過去のデータから将来の姿が読み取れるかどうかだ。過去のデータからパターンを読み出す場合、AIはオーバーフィットしやすくなる。つまり過去の延長上に将来のパターンを描き出してしまう傾向がある。

 

・この場合に生まれる偽パターンを避けるために、ランダムフォレストやSVMという技法が使われようだが、いずれにせよ同じデータソース(過去の実績)を使うので、偽パターンを避ける決定打にはなりえないようだ。

 

・経済予測に問題を移せば、不確実な未来にどう対処するか。その場合に過去のデータはどのように使えるのか、計算力の強力化をどう活かすか、などが課題となる。

 

・では当方のe予測はどのようにして、この問題に対処しているのか。簡単にその特色に触れておく。

 

1)e予測では経済事象を歴史事象と認識する。

 つまり過去の延長に将来はないことを前提にする。ポパーの言葉を使えば、「過去は閉じており、将来は開かれている」(非決定論)。

 

2)したがって将来を予測することは、一種の探索過程であり、いわばレーダーの走査を行うことで将来に関する”シナリオ”を作成することである。

 

3)将来のシナリオを作成するに当たり2つのツールを用いる(バーンスタインの前方推論方式の改良)。

 

 a)過去の経済データからの知識は、スタイライズド・ファクツとしてモデルに活用する。スタイライズド・ファクツとはカルドアの造語で、①マクロ経済の大きなトレンドに注目する、②仮説提示型(今後のマクロ経済の問題点を明らかにする)という特色を持つ、e予測の数量モデルはスタイライズド・ファクツが活用されている。

 

 b)将来に対する展望として、長期スパンに立つ歴史認識を利用する。具体的には、大技術革新(Macro Invention)を歴史の駆動力と考え、産業革命のインパクトをゴードン仮説、IT革新のインパクトを現在の駆動力と理解し、将来ビジョンを組み立てる(ベンクラーのピア生産方式など)。

 

 c)a)とb)の交差から将来展望を描き出す。 

 

4)コンピュータ能力の急拡大(いわゆるシンギュラリティ現象)は、e予測では、数量モデルを迅速に解くこと、様々な情報をネット上から確保することで活用する。

 

・こうして歴史認識とコンピュータのシンギュラリティを組み合わせたアプローチを、ここではIA(Intelligent Amplifier、Vingeの造語)と呼んでいる。

 

・e予測は、最近注目されているエージェント・マクロとも一線を画している。e予測の目的は、21世紀初頭という時代に限った特殊解を、具体的かつ多様な形で迅速に解くことである。他方エージェント・マクロは、特定の時代に依存しない一般解を得ることを目指している。

 

(参考)

Mackintosh J.,”AIがウォール街を乗っ取れない理由”,WSJ,2017.07.19

  (RoboticHogwash! Artificial Intelligence Will Not Take Over Wall Street)

Sebastian Raschka,Python機械学習プログラミング 達人データサイエンティストによる理論と実践、クイープ、2016年

Kaldor N.,”Capital Accumulation and Economic Growth”, in Lutz and Hague ed. The Theory of Capital,Macmillan, 1963

Kaldor N., “Stylized Facts as a Basis for Theory Building”,in Economics without Equiribrium, M.E.Sharpe,1985

カール・ポパー、「開かれた宇宙」、小河原誠、蔭山泰之訳、岩波、1999年

 

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