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自動運転車の実力

・カリフォルニア州では、自動運転車の州内のテスト運行を認め、

その走行実績を当局に報告するよう求めている。2016年分の結果が

最近発表された(Autonomous Vehicle Disengagement Reports 2016)。

 

・ここにはBMW、ボッシュ、フォード、グーグルオートなど12社の成績が示されている。

この結果を見ると、グーグルのWaymoが他を圧倒して高い能力を示していることがわかる。

 

・通常こうしたテストの結果は千マイルあたり何回人間ドライバーが安全上の理由で自動運転に干渉したかで測られる。Waymoはこの値が0.2で他社を圧倒している。しかしこの数字だけをみると、たとえばBMWは1.6でそれほど変わらないのではないかという印象を持つ。

 

・しかし実際にはそうではない。Waymoの2016年のカリフォルニア州における走行距離は63万5千マイルに達している。この間、人間が介入したのは124回で、その結果が0.2という値になる。

 

・他方BMWの走行距離は、同期間に638マイルに過ぎず、その間一回人間が介入したので1.6という値になる。つまり実験の中身の濃さがまるで違うのだ。

 

・なぜこれだけ差がついたかと言えば、単純に言えば、グーグルには自動運転の元祖スランがいるからだ。彼はDARPAのグランドチャレンジで、当初カーネギ工大のグループを率いて参戦し、のちにスタンフォード大のグループを率いて参戦した。

 

・スランは、単に実践に強いだけではなく、スタンフォード大学で教え、ベイズネットワークに基づいたロボット工学の創始者でもある。興味ある方は、彼の教科書(Probabilistic Robotics, MIT Press)をぜひ読んでいただきたい。

 

・日本では相変わらず人間運転の補助として自動運転が位置づけられ、また役所主催の研究会などで、さまざまな人が議論を楽しんでいる。

 

・こうした役所主導の審議会システムでは、自動運転をはじめとするIT時代の変化には対応できない。今の日本経済は自動車メーカーに食べさせてもらっているのが実情だ。このままでいけば、自動運転とEVの普及により、日本メーカーは没落しかねない。のんびり会議をしている余裕はないはずだ。