ディジタル貨幣の衝撃と日本経済

・今年の3月に、元連銀理事で現在シカゴ大学にいるクロズナー氏が発表した、「銀行の未来」と題する論文が話題を呼んでいる(WSJ紙、2015428日)。

 

 ・このペーパーはそれぞれ読んで頂くことにして、ここでの主題は、このペーパーにも引用されていた英国銀行スタッフによる論文である。作者はアリとハルデーン等だが、前者は英国銀行のディジタル貨幣の責任者、ハルデーンは前にも引用したが、将来の有力な総裁候補で、英国銀行・金融システムの責任者である。

 

・アメリカの論文と異なり、英国のそれは、示唆と諧謔に富んでいる。彼らの主張の大きなポイントは、クロズナーも引用している、以下のくだりである。

 

「(IT革新を利用することにより)お金の借り手と貸し手が互いに情報を共有できるようになれば、 借り手と貸し手の間に媒介者として銀行のいる必要は無くなる。中間項のスキップは、はすでに音楽(訳注:ituneなど)や出版(訳注:アマゾンなど)で生じている。(金融に関して)情報ウェブが発達し、共通言語が出現すれば、これは現実性を帯びてくる」

 

・アリとハルデーンは、この論旨を導くために、世界のサプライチェーンやウェブがどのようにして、ネットワーク化と共通言語化を進めて言ったかを丹念に説明している。特にウォールマートの例は面白い。これを読むと、ビッグデータの意味がはっきりと浮かび上がってくる。

 

・ディジタル貨幣の時代に突入する時、仮に在来の金融セクタがそれに対応できなければ、金融政策の効果や機能が、従来考えられていたのとは、異なる形で毀損される可能性が出てくる。クロズナーの懸念はこの辺にあるようだ。

 

・翻って日本の場合、日銀は、必死になって貨幣供給を増やそうとしている。しかしそのマクロ効果は未だしだ。ひょっとして、これは上に示したような、IT革新による既存金融セクタの空洞化によるものではないだろうか。 

 

(参考文献)

Ali Robert ,Haldane Andrew and Nahai-Williamson, ”Towards a common financial language”,March,2012

 


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