原油価格の下落とそのインパクト

約半年前になるが、あるジャーナリストと原油価格に関して議論したことがある。そのときのポイントは、2008年のリーマンショック以降も原油価格が高止まりしているのは,なぜかと言うものだった。ちまたでは原油価格の決定要因として、金融要因が加わったから,高値が続くなどという議論が行われていたが、感性的な指摘にとどまり、あまり説得性がなかった。そのとき二人の結論は、「日本には世界エネルギー市場動向を論理的に議論できるエコノミストが居ないね」だった。評論家は多いが、分析家は不在である。分析家が居ないと、大きなトレンドを見失い、将来に備えた戦略の策定ができなくなる。

 

 ごく最近になって原油価格は大幅に下落し、その意味では市場メカニズムは、若干の時間遅れのあるにせよ、正常に働いていることがわかった。ではこの原油価格は世界経済にどのようなインパクトを与えるのだろうか。フィナンシャルタイムズのマーチン・ウルフは以下のように整理している(Martin Wolf, “Two cheers for the sharp falls in oil prices”,FT, Dec.2,2014.)。

 

1.今回の下落は石油生産国から消費国へ約1.3兆ドルの移転をもたらす。

2.先進国のインフレ傾向はこれで弱まる。

3.産業構造がエネルギー多消費化する。

4.イラン、ロシア、ベネゼラなどへの経済的影響は大きい。

5.為替レートが変化する(例ロシアのルーブル)。

6.温暖化対策が後退する。

 

これに加えるとすれば、国際政治の枠組みの変動だろう。すでにロシアは、西欧の経済制裁もあって、財政危機に陥りつつあり、これが思わぬ形で国際政治に大きな変化をもたらすかもしれない。その場合日本はどのように対応するのか。まず重要なのは腕の良いエネルギー分析家を育てること、第二に、世界のエネルギー・インナー・サークルに入れる人材を、外国から輸入でもかまわないから、引き入れることだろう。大昔、故大来佐武郎氏(エコノミスト、外務大臣を歴任)の活躍を思い出すと、特にこうした感は否めない。氏が外務大臣だったとき、どれかのサミットで、カナダの外務大臣が彼の所に駆けよって、密談を交わしていたのを覚えている。また氏の最後の議論相手がバーグステン氏(アメリカの政策分析家)であったことは、記憶に新しい。

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